天木 論点は非常にたくさんあるんですけれども、この際、矢部さんの口からですね、研究した結果といいますか、そしてそれを一つにまとめられた、この近く発行される本の主要な論点はどこかということを教えていただきたいと思います。
矢部 まず、私がもう7年間研究してきて、自信を持って言えることがあるんです。全体の構造が去年、ほぼ分かりました。
ですからはっきり言えるんですけれども、もう明らかに密室でずっとおかしなことをやってきて、それは直接的には、アメリカ政府そのものが押し付けている体制ではないということですね。
本質的には、米軍の既得権益みたいなものがずっと残っていて、それと自民党という政党が一体となって、その体制が強固に続いてきてしまったと。
だから今、我々日本人はちょっと無力感に苛まれていて、「まあそんなアメリカに逆らったって」と思っているんですけども、これは明るいところに出て「こんなおかしな体制は我々は変えます」と言った場合に、アメリカの大統領や国務大臣が絶対に、「いやこのまま続ける」と言えるような問題ではないんです。そのことを自信を持って言いたいと思います。
天木 今、矢部さんが言ったのは極めて重要でですね、一言で言えば情報公開なんですね。
ご承知のように、この加計問題が、あるいはその前の森友問題が、なぜここまで、あれほど強い一強安倍体制を崩壊させたかというと、それはやはりすべて情報公開だったと思うんです。
誰もが知らなかったところでですね、あのように権力の私物化が行われていたと。我々が納めた税金がですね、あそこまで特定の人間に優遇されていたと。これは誰が見てもですね不公平、不平等。ですから当然怒りがついたわけですね。
ですから、私はやはりこの日米関係の闇といいますか、密約といいますか、まあ私は矢部さんが仰ったように、自民党が積極的にアメリカと結託して、そうしたとは思わないんです。
歴代の自民党の首相はですね、みんな悩んだ。だけど、どうにもならなかった。それは彼らがですね、国民に隠して、自分たちだけで処理しようとして、どうにもならなかったんですね。
ですから、私は国民がそれを知ればですね、誰が見てもこれはおかしいと。
そしてその国民の怒りをですね、世界が知れば、誰が見てもアメリカがおかしいと。そして、世界がそう言えばですね、どんなアメリカの大統領であれですね、これは自分たちにとっても良くないと。間違いなく私はそう思うんですね。
だからその意味で、私はこの矢部さんがやろうとしていたことはですね、画期的なことであって、必ず実を結ぶと、結ばさせなくてはいけないという思いです。
まあ、ちょっと私が喋りすぎたんですが、どうぞ。
矢部 私はね、ずっとあっちの公文書を研究してて、一番驚いたのは、アメリカの外交官はね、もうこんなひどいことはやめろって何回も言ってるんですね。
国務省の方は辞めたがってるんだけれども、やっぱり第二次大戦の戦勝以来続いてる米軍の既得権益っていうのは、アメリカの国務省でもなかなか奪えないんですね。
天木 そこがまた重要でですね、私は矢部さんの労作を改めて見てですね、そもそも思ったのは、米国政府と言うのは米軍なんですね。そして、米軍はアメリカでは非常に大きな地位を占めてる。つまり、アメリカという国は建国以来、軍事国家なんです。常に戦争してきて、戦争を勝つことによって国が栄えてきた。ですから、日本と根本的に違うんですね。
で、その米国が、アメリカの軍を主導させてですね、日本との関係を支配してきたというか、放置してきたというか。この実態を、まず我々は知るべきだと思います。
矢部 でも逆に言うとね、日本人がきちんとした政権を作って、それでこういうあまりにも無茶苦茶なことはやめてくれって言うと、それは国務省の方も動けるわけですよ。
これ本当に何回も言ってることですけど、日本の政府がいいって言っていたら、米軍は「いやそれはもう日本人がいいって言ってるんだから触るな」と、常に米軍司令官が言って、その話が潰れたということを繰り返してきていると。
天木 まあ、その一例をですね。ぜひ説明してください。
矢部 はい。これは僕、天木さんにちょっと聞きたいんですけども、横田空域の問題がありますよね。首都圏上空を米軍が支配しているという。
この信じられない状況。我々これでやってきて、トータル7、80万部売れてますから、テレビにも取り上げられて、大分知ってきたと思うんですけど、これ日本人は今どれくらい知っていると思いますか。
天木 まだ、ほとんど知らないでしょうね。
矢部 やっぱりそうですか。
天木 もちろん、知っている人は知っています。知っている人は知っていて、そしてこの主権がない状態をですね、批判的に見ている人はいるんですけども、広がらないんですよ。
矢部 広がらないですね。
天木 広がらない。で、それはやはり一つは難しいということと、やっぱり日常茶飯時ではなかなか目につかないと。つまり、米軍がやたらと飛んで、騒音の犠牲があるとか、そういうことはもちろん日常的に報じられるんですけれども、その根本にあるですね、主権侵害を放置しているというところは、なかなか知らないと思うんですよ。
矢部 孫崎さんは、「要するに外務省はね、日米関係をやっている人間以外は知らない」って言うんですよ。そういう現状なんですよね。
天木 いや、知らないでしょう。
矢部 そうですね。
天木 まあ外務省も、どこの職場もそうかもしれませんけど、やっぱり、縄張りというのがあってですね、よその部局がやってることにね、口出しはしないというのがあるんですよ。もちろん自分たちの所が忙しいっていうのもあるけども。ですから、そういう意味で日米関係を俯瞰的に見ている所がどこにもないんじゃないですか。
矢部 だからこれはね、我々日本人がね、やっぱり天木さん、孫崎さんという外務省の高級官僚を得られたことのひとつの、まあラッキーなわけですよ。
こんなことをね、外務官僚が知らない、なんていうことは想像もしてないわけですよ。で、これを外務省の官僚が知らないというだけで、この国がいかにおかしな国かっていうことが分かりますよね。
天木 私は、単に知らないだけでなくてですね、知らされていないと。あるいは、知るのが難しいほどですね、複雑でかつ秘密裏に行われてきたということだと思うんですよ。その時その時のですね、外務官僚が知っていたと。
だけど、それを後輩に引き継ぐようなシステムはもちろんないし、その同僚たちでさえも、自分の担当でないところは知らないというようなことが、私は行われてきたと思うんですよ。
ですから、根は深いと。だけども、やっぱりここまで情報社会が徹底してきて、どんな人間でもどんなことも発信できて、それがあっという間に広がるということになればですね、やはりひとつひとつね、繰り返し繰り返し指摘していく必要があると思うんですよ。そうすると、間違いなく変化が起きると思うんです。
矢部 だから、これを見て分かるように米軍の関係者っていうのは、日本に自由に出たり入ったりできるわけですね。それで、その入ってきた人間が、まあ大体、最近は横田に直接来るっていうのは明らかになってきてますね。
天木 まだ、だけど分からないでしょうね。
矢部 分からないですね。これも、まあこのシリーズで大分有名になりましたけど、日米合同委員会っていうのがありまして。これ、ちょっと誤解されてるんですけど、これが影の政府みたいにすべての物事を決めてるわけじゃなく、これは軍事を決めてるんですけれども。
ここで決まったことはね、もう日本の法律体系の上に行くわけですよね。ですから、国会に諮る義務も、公開する義務も、日本の憲法、法律を守る義務もないという、もう無茶苦茶なことが続いていると。
天木 この日米合同委員会の衝撃なところはですね、これはまさに、まだ日本がアメリカの占領下に置かれていたほぼ同じような時期にですね、つまり日米関係の戦後の始めの時期に作られ、しかも、今は国務省も関与してるんですけれども、当初はアメリカの軍とですね、日本の政府、つまりすべての省庁の官僚がですね、集まる会議だったんです。
つまり、米軍がまさに日本を支配する、その合意機関なんですね。ですから、非常に重要な意味を持って、驚くべきことに今でもこれが続いているということなんですね。
矢部 それでさっき言ったのはね、この合同委員会をめぐってね、その日本に来ている外交官たちは、もうこれは結局大使館がない占領時代の関係がそのまま続いていると。こんなことは絶対にやめるべきだと言う人が、何人もいたと。
ですから、さっき言いましたように、こういう関係はね、本当に明るいとこに出て言ったら、絶対続けるとは言えない。
「知ってはいけない 隠された日本支配の構造」刊行記念対談 天木直人✕矢部宏治
対談動画2:【論点】アメリカの既得権益と日米合同委員会について
著者:矢部宏治(やべ・こうじ)プロフィール
1960年兵庫県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。
株式会社博報堂マーケティング部を経て、1987年より書籍情報社代表。
著書に累計17万部を突破した『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』
『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』(以上、集英社インターナショナル)、
『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること――沖縄・米軍基地観光ガイド』(書籍情報社)など、
共著書に『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(創元社)。
企画編集に「〈知の再発見〉双書」シリーズ、J.M.ロバーツ著『図説 世界の歴史』(全10巻)、
「〈戦後再発見〉双書」シリーズ(以上、創元社)がある。
『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)
現代ビジネス「なぜ日本はアメリカの「いいなり」なのか?知ってはいけないウラの掟」
天木直人プロフィール
元外務省職員、作家。
京都大学法学部を中退し外務省入省後、豪州日本国大使館公使、レバノン国特命全権大使などを歴任。
イラク戦争当時、ブッシュ米大統領のイラク攻撃を支持した小泉首相に反対し外務省から罷免。
現在は、高級官僚や小泉政権の腐敗ぶりを暴くなど、自由な立場から言論活動を続ける。
著書に『さらば日米同盟! 』(講談社)、『さらば外務省!』(講談社)等。
天木直人 著書
・さらば外務省! ―私は小泉首相と売国官僚を許さない (講談社)
・マンデラの南アフリカ ―アパルトヘイトに挑んだ外交官の手記 (展望社)
・外交力でアメリカを超える ―外交官がたどり着いた結論 (かもがわ出版)
・九条新党宣言 (展望社)
・怒れ、9条! ―憲法9条こそ最強の安全保障政策だ
・イラク派兵を問う (岩波書店)
・ウラ読みニッポン ―新聞ではわからないことがわかる本 (講談社)
・さらば小泉純一郎! (講談社)
・アメリカの不正義 ―レバノンから見たアラブの苦悩 (展望社)
・さらば日米同盟! 平和国家日本を目指す最強の自主防衛政策 (講談社)
・自立する国家へ! (ベスト新書)
・アマル それは希望 ―七つの愛のアンソロジー (ゆにっとNOVELS)
横田空域のこと確かに私の周囲の人は知りません。
だけど、まったく日米関係について知らない人に知らせるための良い糸口だと思います。
私が帰省するときに飛行機をつかっていたときの話。飛行機は離陸すると、不合理なルートを飛ぶんです。
いったん海上に出て、そのあと急上昇するんです。
これは米軍以外は羽田上空の横田空域を飛べないからそうするのだと思います。
そして飛行機は空域の上に出て、進路を決める。
パイロットにしてみれば、不便だし、危険を感じるんじゃないでしょうか。
飛行機で国内旅行をするなんて珍しいことじゃない。
離陸のときに飛行機はこう動くんですよ、といえば、自分ごととして思い出す人も少なくないと思います。
試しに私の友人数人に話してみましたが、驚いていました。
余談ですが、私の義母(昭和10年代生まれ)は「これからの自衛隊には就職しちゃいけない」と言っています。
その世代だと相場感があるのかもしれません。
この動画も国民が必視聴です。日本人に知らされてないことがいっぱいあることが分かります。
新江崎沖縄・北方領土大臣が、日米地位協定の見直しをすべきと述べた。その後は、見直しが改善になったのはなぜ??
8月9日のグッドモーニングで、この新大臣の話題、しかし識者であるもと外務官僚の人が、すかさずいろんな要望があるのをアメリカにぶつけて二週間ごとに議論して、合意ができてるから事実上変わってきていると、この日米地位協定はNATOや,諸外国に比べて、遜色がないものだから、大臣にもっと勉強してほしいとまくしたてた。
政府だけでなく、識者が、こんな誤魔化しを言うから、日本人がいつまでも真剣にこの問題に向き合えなかったと思う。この2週間ごとの会議を最小限日米合同委員会構成メンバーなどのこと説明すべきです。米軍からの要望ばかりが目立っ合意内容であることは、最近は多少明らかにしている合意内容要旨で確認できます。
天木氏と矢部氏の一連の対談を視聴することで理解が進みました。