今回の米国の黒人暴動はトランプ大統領を窮地に立たせるかもしれない。
トランプ大統領がG7を延期すると言い出したのも、もちろんメルケル首相に拒否されたこともあるが、本当のところは、黒人暴動の高まりに、それどころではないと思いはじめたからではないのか。
そう思えるほどの黒人暴動の広がりだ。
バイデン候補は今こそ、共和党の批判を恐れず、トランプ大統領では黒人は見殺しにされる、いまこそ黒人は自分に投票すべきだ、と訴えて、トランプ大統領と死闘を展開すべきだ。
それにしても黒人暴動は、米国の原罪とでも呼ぶべき米国が抱える致命的な問題である。
報道では、キング牧師以来の暴動であると報じるものもあるが、その比ではない。
あの時は市民権がまだ黒人に十分に付与されていなかった時の、希望を求めた抗議だった。
「私には夢がある」と言う演説に皆が熱狂した未来があった。
しかし、それから50年以上も経った中での絶望的な黒人差別である。
私は1997年から三年間あまり、米国のデトロイトに総領事として勤務し、黒人人種差別は米国の致命的な原罪だと実感した。
当時のデトロイトは今から思えば復興の希望が戻りつつある良きデトロイトだったが、それでも悪魔の夜(デビルズナイト)が語り草になっていた。
1970年代に起きたハロウィーンの夜の黒人による放火・暴動さわぎのことだ。
それからも、何度も黒人暴動は米国の各地で繰り返され、そして何も変わらないまま鎮圧されて終わって来た。
今度の暴動もその一つに過ぎないのかもしれない。
しかし、私の直感は、今回はこれまでのどの黒人暴動よりも深刻かもしれないという気もする。
きっかけはたった一人の黒人の死だ。
しかし、その動画を見る限り、白人警官による、あきらかな悪意に満ちた殺人行為だ。
ここまで白人による黒人差別が米国ではいまでも行われるのだ。
そしていま米国では世界最大のコロナ犠牲者が出ており、犠牲者の圧倒的多数が黒人だという。
そして米国はいま、トランプ大統領の米国である。
トランプ大統領はただの人種差別者ではない。
ユダヤ人をあからさまに優遇する二重の意味の差別主義者だ。
私はデトロイト総領事の時にユダヤ系米国人から聞いた言葉を今思い出している。
俺たちは米国の2%ほどの人口しかないが米国を思い通りに動かしている。
黒人たちは人口の十数%も占めているのに、何一つ自分たちの欲しいものを手に入れられないままだ。
馬鹿な連中だ、と。
米国は、国民の間で真の融和が出来ない分裂国家だ。
そんな分裂国家が、いまトランプ大統領の下で崩壊状態になりつつある。
そんな米国との同盟関係について、「ほかに選択の余地はない」と言い続ける日本に、明るい未来があるはずがない。
ポスト安倍の日本の政治の最大の問題は、分断され、世界の指導国から背を向ける米国との関係をどう再構築していくかである。
米国を取るか中国を取るかといった問題ではない。
米国から自立できるかどうかこそが問題なのだ。
その事に異論のある政治家や有識者やメディアはいないだろう。
果たしてそれを国民に問いかける指導者が出てくるだろうか(了)
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