新党憲法9条

憲法9条それは希望

野党が安倍政権を倒せない理由を喝破した日経の「大機小機」

 きのう3月7日の日経新聞の経済コラム「大機小機」の見出しは、「政治の貧困は野党だけの責任か」という見出しだった。

 その見出しにつられて読んだ。

 てっきり、安倍政権の無責任な答弁の繰り返しを批判する記事かと思ったからだ。

 ところがそこに書かれていたことは私の予想とは全く違った。

 そこで書かれていた事は、ひとことで言えばこうだ。

 本来、責任ある与党とは、政府と一体になって財政の均衡化をはじめとした持続可能な政策を目指すことが本筋だ。

 そしてそれには、国民に痛みを伴う改革を受け入れるように説得する覚悟が必要だ。

 仮にそれで選挙に敗れても国益のためにはやむを得ない。

 これが本来の責任ある政府の在り方である。

 ところが今の安倍政権はどうだ。

 当初の意気込みは消え、最低賃金の引き下げや春闘への介入など安易な道を選ぶようになった。

 新年度から施行される非正社員との賃金格差是正の同一労働同一賃金法も、欧州なら左翼政権の基本路線だ。

 国民に嫌われそうな構造改革は棚上げし、左派野党の政策を横取りする。

 これでは本来の左翼野党の出番はない。選挙には勝てるが、日本経済の衰退は止められない・・・

 何のことはない。

 政治の貧困は野党にあるが、その野党に迎合する安倍政権もまた無責任だと言っているのだ。

 手のいい野党たたきだ。

 しかし、この野党たたきは、米国資本主義を標榜する日経新聞だから当然だという事を割り引いても、ひとつの真実をついている。

 つまり権力を握った政権政党が野党の経済・社会政策を先取りすれば、野党の出番はなくなるということだ。

 実は同じ事を、かつて2月5日の、毎日新聞紙上で、佐々木毅元東大学長が語っていた(論点「安倍政権7年」への道)。

 「・・・自民党は、イデオロギー的に保守党だが、経済面では、緊縮志向よりも社会民主主義的な再配分志向が強い。つまり、欧米の保革両方の性格を備えて来た。その自民党と旧社会党が連立を組んでしまえば、戦後政治の全潮流が一つになったようなものだ。これに『対抗軸を作れ』と言われても、手本がなかった。今の自民党にも再配分志向は色濃く残っているといっていい。それでも、自民党が自他ともに認める保守政党である以上、野党は社会民主主義的な旗を掲げざるを得ない・・・」

 今安倍首相は、今度のコロナ危機で、野党も真似のできない前代未聞のバラマキをどんどん始めようとしている。

 すなわち資金繰りが苦しくて倒産する中小企業に対する救済資金の拠出、出勤自粛で一番ヒットされる共働きやフリーランスに対する現金補助、コロナウィルス検査の保険適用、などがそれだ。

 これからもどんどんばらまくだろう。

 これでは野党の出番はない。

 つまり暮らしや経済や格差をあげつらっているだけでは安倍政権を追い込むことは出来ないのだ。

 ましてや今は国家化非常事態だ。

 政府の対応のまずさを批判する暇があったら少しで国民の為になることをしろ、となる。

 そしてそれが出来るのは権力をもった政権だけだ。

 しかし、野党は、佐々木氏が言っている「自民党はイデオロギー的に保守政党だ」という意味をよく考えた方がいい。

 戦後一貫して保守政党が党是としてきたことこそ日米同盟最優先だった。

 その歪みが今の日本をここまで委縮させてしまった。

 この是正こそが、戦後の野党の対抗軸だったのだ。

 そしてそれは、「憲法9条を改正させない」という不毛で消極的な護憲ではない。

 憲法9条に忠実な外交、つまり憲法違反の日米同盟から決別し、自主・自立した平和外交を実践することだ。

 もちろんその大前提には、戦前の日本の軍国主義の誤りを率直に反省し、アジアとの共存、共栄を目指す事がある。

 この対抗軸を避けて、経済政策・社会保障政策ばかりを訴えるから安倍政権を倒せないのだ。

 それでいまは政権を取れなくても、国民が覚醒すれば逆転する、そう、国民を信じるのだ。

 このままでは、政権を取って自分の思いを実現したい野党や野党政治家は、自民党と連立を組んだほうが得策である(了)

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