米外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)が15日、トランプ政権が日本政府に対して在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)を現在の約4倍に増やすよう要求していたことがわかったと報じた。
この報道に日本政府は大慌てに違いない。
なにしろ、日米安保条約の密約性と不平等性の負担は、今度飲まされる日米貿易協定どころではないからである。
ついに恐るべきものが来るのである。
私が注目したのは日本政府の対応だ。
共同と産経だけが報じている。
日本政府高官は16日、「(ボルトン氏らは)求めてきていない。交渉はこれからで、まだ始まってもいない」(産経)と。
日本側は、「日本は既に同盟国の中でも高い割合を負担している。非現実的だ」と拒否した(共同)と。
しかし、これらは日本政府の正式な発表ではない。
日本政府は何も語っていない。
いや、語れるはずがない。
在日米軍駐留経費については5年ごとに改定する特別協定で決められる。
現行協定は21年3月末に期限が来るから、新協定の交渉が来春から始まるのだ。
その時に初めて日本政府の方針があきらかにされるのだ。
そしてその交渉は日本政府にとって最も苦しいものになる。
いまどうしようかと安倍政権は頭を抱えているのだ。
「思いやり予算」は、日米安保条約上の義務では支払わなくていいものを、「思いやり」で、日本側が米軍のためにかわって負担する(基地従業員の給与や社会保険料、基地の光熱費、施設整備費など)ものである(東京新聞)
なんで日本がそこまで負担しなければいけないのか、という不合理なものだ。
金丸信がそれを認めろと言った当時(1978年)はまだ少額だった。
日米の不平等性もいまほど目立たなかった。
なによりもインターネットの無い時代だ。
情報公開は進んでいなかった。
だからごまかせたがいまはそうはいかない。
しかも、日本政府が在日米軍に対して負担している経費は「思いやり予算」だけではない。
沖縄の辺野古新基地建設費をはじめとした、思いやり予算をはるかに上回る「在日米軍関係経費」を負担している。
これらを含むと既に年間6000億円近くを日本側は負担している。
ところが、米軍に、ましてやトランプ大統領に、このような区別は存在しない。
米外交誌フォーリン・アフェアーズは、思いやり予算を約4倍の8700億円に増やす提案を米側はしていると書いているが、日本が米軍に支払うのは、それだけでは収まらないことは明らかだ。
しかもである。
トランプ大統領の韓国に対する負担増額要求は、在韓米軍撤退の口実にしようとしている可能性がある(リチャード・ハース外交問題評議会会長)という。
もしそうであれば、在韓米軍が撤退することもあり得る。
そしてそうなれば、これまで以上に在日米軍の重要性が高まり、在日米軍強化の可能性が高まる。
ますます日本の負担が増える。
それでも安倍首相はトランプ大統領の要求を断ることは出来ないだろう。
トランプ大統領と緊密な信頼関係を築いた安倍首相が断れないのだから、誰が首相になっても断れないだろう。
米外交誌が報じた米軍駐留経費4倍増要求の衝撃とは、そういう意味である。
日米安保体制を見直さない限り、日本はどんどん米国に搾り取られていくということである(了)
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