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米国のアセアン軽視がアセアンを自立させることになる

 今年のアセアン関連首脳会議の報道を見て、私はアセアンの将来を見る思いがした。

 一つはトランプ大統領が3年連続で首脳会議を欠席したことだ。

 そして、代わりに送った代表が、昨年はペンス副大統領だったのに、今度は大統領補佐官に格下げた。

 しかもオブライエンという大統領補佐官は、更迭されたボルトンの後任で、着任したばかりだ。

 それだけならまだ、米国のアセアン軽視だ、といって見逃すことができる。

 しかし、私が驚いたのはアセアンが反発した事だ。

 バンコク発共同が教えてくれた。

 米国とアセアンの首脳会議には、昨年はアセアンすべての十カ国の首脳が出席したが、今度は議長国であるタイを含めた三カ国に限定したという。

 対抗措置だと言う。

 ここまで米国の存在感が弱まったのだ。

 当然のことながら中国の存在感が高まる。

 李克強首相は南シナ海をめぐり、「長期的な南シナ海の平和と安定を守りたい」と言って、2年以内に行動規範を作りたいと提案したらしい。

 これに対して米国がどう反応した不明だが、格下げのオブライエン補佐官が何を言っても迫力はない。

 そこで安倍首相の出番だ。

 出発前に安倍首相は例によって、国際法に基づいて紛争を平和的に解決することの重要性を訴えてくると、中国をけん制する発言を羽田で語ったらしい。

 実際に安倍首相が李克強首相の前でどう言ったかしらないが、安倍首相が何を言ってもトランプの代弁と受け止められて終わる。

 下手をすれば中国を怒らせて習近平主席の訪日が危うくなる。

 だから安倍首相は何も言えないだろう。

 それでは中国のアセアン支配が強まるのか。

 そうはならない。

 米国不在の中で、中国けん制の先頭に立つのはベトナムだ。

 かつてベトナム戦争が激しかった時、中国に支配されるぐらいなら米国に支配されるほうがましだと、当時の指導者ホーチミンが言ったことが語り草になっている。

 それほどベトナムの中国警戒心は強い。

 またフィリピンのドテルテもマレーシアのマハティールも控えている。

 中国はアセアンの結束(アセアンコンセンサス)を尊重せざるを得ないのだ。

 これを要するに、米国と日本が介入しなければ、中国とアセアンによる南シナ海の平和的行動規範はおのずと出来上がるのだ。

 かつて日本はアセアンに経済援助をばらまいて、アセアンを助けるのは日本だと上から目線だった。

 その時の担当官の一人が私だった。

 しかし、それから三十年余りたち、ゆっくりと、しかし着実に、アセアンは発展していった。

 米国や日本が介入しなくても、アセアンは中国と上手くやっていく。

 それどころか、米国や日本が手を出さなければ、アセアンと中国は上手くやっていくのだ。

 中国はアセアンを敵に回す事は出来ないのだ。

 それを教えてくれた今度のアセアン関係首脳会議である(了)

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