韓国の文在寅大統領が訪米しトランプ大統領と北朝鮮の非核化について話し合った。
それに関する報道を読むと、ひとことでいえば、文在寅大統領の第3回米朝首脳会談の早期開催の要望に対して、トランプ大統領は、北朝鮮との対話路線は維持しつつも、北朝鮮の完全な非核化と制裁解除の一括合意というビッグディールの方針は変えない事が明らかになったということだ。
これを要するに、米朝協議は長期戦になるということだ。
その限りでは文在寅大統領の仲介は奏功しなかった。
だから、例によって、日本のメディアは、韓国の仲介役で米朝協議が進むことは遠のいた、よかった、いまこそ日本の出番だと歓迎している。
きょう4月13日の読売新聞に至っては、「韓国は米国と歩調を合わせよ」という見出しで、あからさまに書いている。
北朝鮮が完全な非核化に踏み出すよう、韓国はその重要性を認識し、米国と足並みを揃えなければいけない、と偉そうに注文をつけているのだ。
非核化のカードを小出しにして制裁解除を勝ち取ろうとする金委員長の戦術は変わっていないから、韓国は米国と日本との連携を重視して北朝鮮に転換を迫ることが求められる、と、安倍外交に都合にいいように書いているのだ。
この読売新聞の考えは、朝日新聞も東京新聞も基本的には同じである。
つまり、北朝鮮の非核化は信用できない。
北朝鮮に対する圧力(制裁)を緩めてはいけない。
韓国は北朝鮮との関係改善に前のめりになるのではなく、日米韓の連携によって北朝鮮に非核化に向けた具体的行動を求めていくべきだというものである。
しかし、それでは北朝鮮の非核化は達成できない。
それどころか、事態を膠着させる事によって、核保有国の北朝鮮を事実上、容認する事になる。
米朝首脳会談が開かれていたちょうどその時、北朝鮮では国会に当たる最高人民会議が開かれ、そこで金委員長は、米国を激しく批判することも、非核化に関する言及も控え、代りに「自力更生」を強調した。
これは金委員長による、明確なメッセージだ。
すなわち、北朝鮮は、核開発より経済開発を優先する事に舵を切ったということだ。
制裁解除に応じてくれるなら非核化をコミットするということだ。
いまこそ国際社会は北朝鮮の非核化に本気で取り組まねばいけない時だ。
仲介役の文在寅大統領はいまこそ大きく舵を切るべきだ。
もはや仲介の交渉相手は米国ではない。
中国とロシアだ。
つまり読売新聞の言う、「韓国は米国と歩調を合わせて」北朝鮮の非核化を進めるのではなく、「韓国は中国・ロシアと歩調を合わせて」北朝鮮の非核化を進めるのだ。
そうすれば、北朝鮮は非核化に応じてくる。
そうすれば、米国は、中国・ロシアと北朝鮮の非核化交渉に参加せざるを得なくなる。
まさしく、仲介国の韓国を入れた五カ国協議の実現である。
もはや米国が非核化交渉のすべてを握る国ではなくなった。
もはや金正恩委員長もトランプ大統領だけと協議しても早期の制裁解除は困難だと分かった。
五カ国協議しかないのだ。
今度の米韓首脳会談が教えてくれた事、それは五カ国協議に向けた不可逆的な進展である。
それこそが北朝鮮非核化という大事業の最短距離なのだ。
ますます日本出る幕はないと言う事である(了)
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