今頃になって、2月のハノイの米朝首脳会談でトランプ大統領が金正恩委員長に対して、すべての核兵器と燃料棒を米国に引き渡すよう要求する文書を手渡していたという報道をロイターが流した。
そして、それがあたかも、米国は完全非核化の方針を変えていなかった、それを読めなかった北朝鮮は会談を決裂せざるを得なかった、といわんばかりの報道につながっている。
しかし、私はそういう見方をしない。
それどころか、このニュースで私はますます確信を強めた。
やはりあの中断は。元側近の弁護士の議会証言での裏切りに慌てたトランプが、首脳会談を中断して帰国せざるを得なかったということだ。
そのアリバイ作りとして、ボルトンが起案した完全非核化を求める文書を手渡して、それを飲めない金正恩に会談決裂の責任を金正恩に押し付けたのだ。
もちろん、トランプは金正恩に直接伝えているはずだ。
いまは合意をするタイミングではなくなった。
だから米国の原則的立場を伝えていったんは中断せざるを得ない。
しかし、ロシア疑惑を乗り切り、政治Ý的基盤を強化した上で、必ず三度目の首脳会談を行うつもりだと。
だからこそ金正恩はトランプを批判せず、ポンぺオ、ボルトンを批判したのだ。
だからこそ、トランプは金正恩を批判せず、政府が決めた北朝鮮への追加制裁を自らの権限で撤回するよう命じたのだ。
そもそも、最初からトランプが金正恩に完全非核化を求めるつもりなら、2回目の首脳会談などするはずがない。
そもそも、最初からトランプの要求が完全非核化しか選択の余地がないことが分かっていたら、金正恩は会談の冒頭であれほど楽観的な発言をしなかったはずだ。
間違いなく、段階的非核化と部分的制裁解除で合意のシナリオは出来ていた。
しかしロシア疑惑に関する元側近の裏切り議会証言で、トランプは中断せざるをえなかった。
トランプは、使うはずのなかったボルトン起案の伝言を、土壇場で使わざるを得なくなったということだ。
それから一カ月たって、トランプはロシア疑惑を乗り切り、勢いを取り戻しそうだ。
このままいけば、トランプは間違いなく北朝鮮の非核化に向けて動き出すだろう。
そしてその時は、米朝に加え、韓国、中国、ロシアを含めた5カ国による協議になるだろう。
なぜなら、米国は、何もせずに、このまま北朝鮮の核保有を認めるわけにはいかないからだ。
だからと言って、非核化に応じないからといって北朝鮮を攻撃する選択は米国にはないからだ。
ロイターの通信の報道は、その事を教えてくれたのである(了)
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