私の元外務省の同期生は20名だ。
そのうちメディアにその名前が頻繁に登場するのは次の数名だ。
すなわち、谷内正太郎NSC局長(東大)、藤崎一郎元駐米大使(慶応中退)、田中均元外務審議官(京大)、宮本雄二元中国大使(京大)らだ。
この中の宮本雄二元駐日大使がきょう2月4日の朝日新聞のインタビュー(沖縄を考える)に登場して次のように語っている。
「中国脅威論は高まる一方ですが、それと辺野古移設を結びつけて考えるのは適切ではありませんと」
その通りだ。
そして彼は続ける。
「冷戦時代、『脅威』をめぐる国会論戦がありました。政府の定義は『脅威とは意図と能力だ』と。ソ連の攻撃力は今の中国とくらべてずっと強大でしたが、それを日本に対して使う意図はない。だから脅威ではない。同じ理屈からすれば中国も脅威ではありません」と。
これもその通りである。
そして彼は更に続ける。
「米中の対立が表面化していますが、中国は経済分野では間違いなく軌道修正します。グローバル経済で相互依存を深め、一番利益を得て来たのは中国です」と。
私もそう思う。
宮本氏が「軌道修正」と言っているのは、譲歩の意味だ。
中国はもはやそのシグナルを米国に送り始めた。
ここまで語る宮本氏だから、私はてっきり次のように結論づけるのだろうと期待した。
だから中国の脅威をいたずらに煽って辺野古移設を強行するのは誤りだと。
沖縄を米中対立の最前線に立たせてはいけないのだと。
私は、元駐中国大使の経験を活かし、宮本氏が習近平主席を評価する発言を繰り返している事を知っている。
だから私は、彼はこう締めくくるだろうと期待したのだ。
いまこそ日本は自主平和外交を展開し、米中対立をこれ以上悪化させないように努力すべき時だと。
ところが彼はこう、そのインタビューを終えている。
「(中国が)軍事面の分野では、軌道修正を検討している気配がないのも事実ですが、そのために日米安保体制があります」と。
「自衛隊があり、横須賀や佐世保に米海軍、空軍がある。さらに核の傘がある」と。
「中国の『意図』をそぐのは(沖縄の)海兵隊の飛行場の立地ではなく、日米安保全体。大きな構図で見るべきです」
こう言って、宮本氏は最後にこう締めくくっている。
「私は米軍普天間飛行場の危険を考えれば、辺野古はやむを得ないとの立場です。様々な可能性を検討した結果だからです・・・」
何のことはない。
安倍政権の言っていることとまったく同じだ。
ここで安倍政権に異を唱えると、日中友好協会会長だか何だか知らないが、次の天下りポストを失いかねないからだ。
宮本氏は私より一年年長であり、京大でも一年先輩にあたる。
だから敬意を表して「さん」づけで呼ぶことにする。
「宮本さん、あなたもか!」(了)
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