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ますます遠のく領土問題と沈黙するメディア

 トランプのIFN離脱宣言によって急浮上した米ロ間の軍事対立は、北方領土の進展に決定的打撃を与える事になる。

 しかし、そうでなくても、もはや領土問題の解決はとっくに遠のいてしまったのだ。

 これから書くこともその理由のひとつだ。

 2日前の夜遅く、日刊ゲンダイの記者から電話でコメントを求められた。

 ロシアの軍事週刊紙に、元ロシア軍高官が次のような寄稿を寄せ、これをイズべスチアはじめとしたロシアの主要国営メディアが報じ、ロシア国内で大問題になっていると。

 そのことをどう思うかと。

 その要旨はこうだ。

 極東地域に限れば戦闘機や潜水艦などの空海軍力では日本はロシアを上回り優位に立っている。

 日本は軍事力による北方領土奪還を将来の目的としている。

 こう、その元ロシア軍高官は寄稿したというのだ。

 日本が極東の軍事力でロシアにまさっていると分析しているのはまだわかる。

 そういう見方も確かにある。

 しかし、日本が軍事力で北方領土奪還を意図しているというのは荒唐無稽も甚だしい。

 しかし、そんな荒唐無稽の分析を、イズべスチア他の国営メディアが流し、それがロシア国内で騒がれているとしたら、そっちのほうが大問題だ。

 プーチン大統領がそれを放置していることこそが問題だ。

 安倍首相が施政方針演説で明治天皇の歌に言及した事と無縁でないかもしれない、

 そう私はコメントした。

 そしてそれがきのう2月2日の日刊ゲンダイ(2月4日付)にそのまま掲載された。

 以上は、これから書くことについての背景説明である。

 私がここで書きたい事は以下の事だ。

 すなわち、この、日刊ゲンダイが取り上げた元ロシア軍高官の寄稿と、それをイズべスチア他のロシアの国営放送が流し、国内で大騒ぎになっていることについて、きょう2月3日の朝刊各紙はどう取り上げたかということだ。

 私は各紙を見比べて探したが、見事にどこも、取り上げていない。

 元ロシア軍高官の寄稿があまりにも荒唐無稽であり、それを掲載した軍事週刊紙が信頼するに足りないから、報道するに値しないと判断したのだろうか。

 日刊ゲンダイの記事など大手紙にとっては記事に値しないと言う事なのか。

 しかし、イズべスチアなどのロシア国営メディアが一斉に取り上げているのだ。

 それを、どの新聞も書こうとしないのは驚きだ。

 おりから、北方領土返還に反対するロシア国民の数は7割から9割に急増したという世論調査が発表された(ロシア政府系「全ロシア世論調査センター)

 安倍首相に忖度したメディアが、これ以上、北方領土返還が遠のいたことをダメ押ししたくないのではないか。

 情けない安倍外交であり、それを擁護する情けないメディである(了)

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