今日発売の週刊新潮(9月27日号)で櫻井よしこ氏が教えてくれた。
産経新聞の石橋文登と名乗る政治部長が、9月14日の「言論テレビ」でプーチン発言は千載一遇のチャンスだ、山が動く可能性があると語ったというのだ。
その要旨はこうだ。
日ソ共同宣言にはこう書いてある。
ソビエトは日本の要望にこたえ歯舞群島及び色丹半島を日本に引き渡す事に同意する。ただしこれら諸島は日本とソ連の間に平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとすると。
プーチン氏は日ソ共同宣言に非常にこだわりを持っている。ということは交渉次第では平和条約の後に2島が返って来るということだ。向こうからボールを投げて来た意義は非常に大きい、と。
こう語ったというのだ。
まさしく、私がプーチン提案を知った時に、千載一遇のチャンスだと書いたのはこういう理由からなのだ。
「言論テレビ」なるものがどういうメディアか知らない。
しかし、こういう意見こそ、堂々と大手メディアで取り上げられ、国論を二分する議論にすべきなのだ。
そして、もし安倍首相が北方領土返還という歴史的業績を残したいなら、腹をくくって政治決断することが不可欠だ。
ひとつは2島返還で行くと覚悟を決めることである。
実はこの覚悟が出来なかったからこそ、歴代の首相は北方領土を取り返せなかったのである。
これまで様々な政権が、官僚たちが、専門家たちが、あるいは2島返還、あるいは面積半分、などという部分的返還を先行させる試みをしてきた。
あの鈴木宗男がそうだし、谷内正太郎もそうだ。
しかし、その都度、外務省のロシアスクールや反ロシア専門家たちから袋叩きにあってきた。
表向きは、敗戦直前に日本をだまし討ちする形で宣戦布告し、領土をかすめ取った、そんなロシアから固有の領土権を取り返すのは当然だというものだ。
しかし、その本音はそうではない。
部分返還ならいつでも出来たが、自分たちは原則論を守って苦労してきた。
それなのに、方針を変更して、部分返還で北方領土問題を解決して手柄をたてられては、たまらない、という嫉妬心があるのだ。
みな、この反対に勝てなかった。
しかし1強で右翼の安倍首相なら、その気になれば出来るのだ。
しかし、この理由よりもっと大きな障害がある。
それは米国の圧力だ。
1956年の日ソ共同宣言の時、もし米国が反対しなければ日ソ共同宣言通り、平和条約を結んで2島は帰って来ていたはずだ。
当時の記憶がある国民は米国の圧力があったことなど知らないから、てっきりこれで2島が返ってくると思っていたはずだ。
領有権がどちらにあるかという原則論にこだわらず、つまり不当に占領された領土を取り返すという考えにこだわらず、ロシアの領土を「引き渡してもらう」という事でよければ、北方領土問題は解決していたのだ。
ところが米国がそれを許さなかった。
サンフランシスコ条約に違反して領土変更を行うなら、米国は沖縄を返さないぞと。
この恫喝こそ、北方領土を取り戻せない最大の理由なのだ。
そしてまさしくプーチン大統領は安倍首相に何度もシグナルを送っている。
返還した北方領土に米軍を駐留させないことを約束できるかと。
つまり安倍首相が日米同盟を止めれば、2島は帰って来る可能性があるのだ。
いや、いきなり日米同盟を廃棄しなくても、安倍首相がトランプ大統領と話しをつければ、2島は帰って来る可能性はあるのだ。
いま、安倍首相は1強である。
右翼を抑えられるはずだ。
そしてトランプともプーチンとも信頼関係が固い事を誇っている。
いましか返還のチャンスはない。
そしてこのチャンスを逃せば2島どころか北方領土はびた一文返ってこない。
経済開発に協力させられるだけで終わるのだ。
安倍首相が政治決断する時は今だ。
対米従属から自立し、日米同盟より憲法9条をこの国の基本方針にして国益を守る、それが出来るかどうか、その決断次第なのだ。
ところが安倍首相はその逆をやろうとしている。
そして、私がこのブログで一番書きたかった事は次のような櫻井よしこの締めくくりの言葉だ。
彼女は最後にこう書いている。
「小さな2島の返還にとどまるであろう日ソ共同宣言に立ちかえることだけを安倍首相が考えているわけではないだろう。22回に上るプーチン氏との、時には本音を見せ合う事もあったであろう首脳会談の中身を知るすべはないが、安倍氏ならば国益を損ねることはしないと思う。
それにしても日本の立場は容易ではない。わが国は日米安保条約で守られているのであり、自力でロシアとわたり合うには限りがある。その限界の中で、北方領土も拉致も、解決しなければいけない。そうした限界を痛感するたび、いつも思う、一日も早い憲法改正が必要だ、と」
あいた口がふさがらない。
なんという情けない考えだろう。
論理破綻した支離滅裂な思考だろう。
こんな連中を友達にしているから、安倍外交はすべてが行き詰るのである(了)
Comment On Facebook