私は何度も書いてきた。
親が子を無断で連れ去る事を原則として禁止するいわゆるハーグ条約に日本が加盟してこなかったの、それなりの理由があったからだと。
2014年に日本がやっとハーグ条約を批准した背景には、米国の圧力があったからだと。
そして私は書いた。
対米従属振りは、加盟した後の日本の裁判所の法適用にこそ顕著に見られると。
しかし、このことをわかりやすく解説してくれる記事をいくら探しても見つからずじまいだった。
そしてやっとその記事にでくわした。
それがきょう8月29日の日経新聞に見つけた「真相深層」というコラムだ。
その記事はまず日本がハーグ条約に加盟せざるを得なくなった事情を次のように教えてくれている。
「日本は長く未加盟だったが国際結婚が増えて状況が変わった。国際結婚した日本人女性が離婚後、海外から無断で子を連れて帰国する事態が増えたからだ。海外での離婚訴訟で親権をとられることを恐れ、日本に連れ帰るケースがある。米国などが問題視して条約加盟を迫り、日本は2014年にようやく発効した・・・」と。
この日経の記事は、「米国などが問題視して」とぼかして書いているが、日本政府が米国の圧力で批准を急いだのは明らかだ。
米国以外の国がいくら文句を言っても相手にしなかったに違いない。
ところが、対米従属振りは、むしろハーグ条約が適用されてからが本格化する。
ハーグ条約においては、まず当事国の当局間で話し合う事となっている。
ところが日本の場合は外務省がみずからを当局と指定した。
対米従属の外務省が日本の当局であるから、米国に協力的になるのは当然だ。
子供を連れ去った母親を米国政府命ぜられて日本の外務省が探し出し、裁判に服すように持っていく。
しかし、日本の裁判所は、子が不利益を被らないように慎重に判断して返還命令を出してきた。
なぜなら、日本の国内法では、執行官が母親から物理的に子を取り戻す強制執行の段階で、「子に威力を用いる事はできない」と規定されているからだ。
すなわち現行制度での子の返還は、母親や子が嫌だと言えば執行は難しいのだ。
これに不満を抱いたのが米国だ。
日本は国際的な約束を守っていないと批判し、米国務省のハーグ条約に関する年次報告書では「拉致」という言葉まで使って名指しで日本を含む12カ国を条約不履行国と決めつけたという。
これでは日本のイメージが損なわれるとばかり、安倍首相に忖度した外務省が司法当局に圧力をかけたに違いない。
いや、もともと対米従属的なこの国の最高裁が言われなくともそうしたのかもしれない。
ついに今年の3月、注目すべき判決が下されたという。
すなわち、子の返還命令を拒否する母親を相手に米国在住の父親が引き渡しを求めた訴訟の上告審で、最高裁は「違法な拘束にあたる」として母親に引き渡しを命じる判決を下したというのだ。
この判決に従って、これからは日本の国内法も改正されることになるという。
日経新聞のその記事は次のように締めくくっている。
「グローバル化に伴い、昔からの日本の家族観も再考が迫られている」と。
そうではない。
日米安保だけではなく、ついに家族関係にまでもこの国の対米従属ぶりがが及んだという事である。
国民的議論が一切されないままにである。
日本の母親たちはなぜ声を上げないのだろうか。
日本の母親たちを代弁して、なぜメディアはこんなことがなし崩しに行われていることを国民に知らせようとしないのだろうか(了)
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