右翼月刊誌「WILL」(ワック出版局)の最新号(8月号)に、阿比留瑠比(あびるるい)という名の産経新聞論説委員の「拉致解決を遠ざける辻元・朝日・河野」という見出しの記事を見つけた。
その記事は、見出しの通り、立憲民主党の辻元清美国対委員長、朝日新聞、そして河野洋平元衆院議長を、北朝鮮寄りだ、反安倍だ、といって酷評する記事だ。
しかし、驚いた事に私の批判が真っ先に登場する。
「元外務省官僚でリベラル派の天木直人氏のコメントが笑えます」と言う書き方で始まるその批判は、かつて私が日刊ゲンダイのコメントに語ったボルトン外しに言及し、ボルトンは外されていなかった、天木氏の見解はまったく的外れだった」、と批判しているのだ。
野党第一党の国対委員長や元衆院議長、そして天下のリベラル紙と並んで真っ先に批判されるとは光栄至極である。
しかも私のような官僚失格のたわごとを、天下の右翼紙である産経新聞の論説委員が取り上げ、名指しで批判されるとは、この上ない名誉だ。
しかし、ボルトン外しはピント外れだったと笑う阿比留氏こそピント外れだ。
確かにボルトンは米朝首脳会談に連れて行ってもらった。
そして首脳会談では脇に座らせてもらった。
しかし、すべてを取り仕切ったのはポンペオ国務長官だ。
考えてみるがいい。
もしボルトンの同行がなかったら、誰の目にもボルトン外しは明らかだ。
それは、とりもなおさずトランプが北朝鮮の要求に屈したということだ。
そんなへまをトランプがするはずがない。
形の上ではポンぺオ、ボルトンの二人を北朝鮮交渉の担当にしておく必要があったのだ。
しかし、米朝首脳会談が確定した時から、そして何よりも米朝首脳会談の後の非核化交渉において、主役はポンぺオ国務長官であり、ボルトンの出番はない。
あの共同声明の中でも、首脳会談後の非核化交渉の担当者として明記されたのはポンぺオ国務長官一人だ。
おそらくトランプはボルトンの名前も明記するよう求めたが金正恩の強い反対にあってあっさり降りたに違いない。
つまりボルトンは外されたのだ。
首脳会談後の記者会見でトランプがこれから始まる非核化交渉の一人としてボルトンの名前をわざわざあげたのは、譲歩したと取られたくないトランプ一流の強がりなのだ。
しかし、トランプは任期の2年半の間に米朝合意を実現する覚悟を固めている。
それを邪魔するようではその時こそボルトンの首が飛ぶ。
米朝首脳会談後の動きを見ると、もはや北朝鮮の非核化と朝鮮半島の平和は中国の同意なくては進まない。
繰り返し私が書いて来た通り、米朝首脳会談は事実上の米中首脳会談であり、米朝首脳会案後の国際政治は、米中覇権争いに突入していくのである。
そんな時に、イラクやシリアやイランのような弱い者いじめの米国のネオコンなど、大国中国の前には出る幕はないのだ。
ボルトン外しを的外れだと笑う阿比留氏こそ的外れなのである。
阿比留氏が、この私のコメントを読んで、まともな論説委員に成長する事を願うばかりである(了)
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