トランプがついに米朝首脳会談の延期を口にした。
トランプは芝居の出来ない男だ。
これは本音だろう。
私は米朝首脳会談の延期もありうると思う。
そうなれば私の読みは外れたということだ。
しかし、読みが外れたのは私だけではないはずだ。
トランプさえも想定外だったに違いない。
皆が読み間違えたのだ。
そして、読みが外れた事は世界にとって不幸な事なのだ。
なぜこんなことになってしまったのか。
それは、ボルトンに象徴される米国のタカ派が調子に乗って北朝鮮に一方的な譲歩を迫ったからだ。
今度の想定外のドラマが起きたのは、それを警戒した金正恩が、習近平に助けを求めたからだ。
中国の後ろ盾を得た北朝鮮は強気に転じた。
金正恩は、米国の強硬派だけではなく、それを抑えつけられない韓国強硬派に対しても牽制した。
私が疑問に感じたのは文在寅が沈黙した事だ。
先の南北首脳会談での二人だけの散歩会談は一体何だったのだろう。
首脳間のホットラインを作ったはずなのに文在寅は金正恩と話した形跡はない。
その代りに文在寅は米国に飛んだ。
そしてトランプを説得するどころか、逆にトランプの米朝首脳会談延期発言を許してしまった。
なぜトランプは米朝首脳会談の延期を考えるようになったのか。
それは、金正恩に騙されるなという強硬派の雑音にまんまと挑発されたからだ。
ボルトンの首を切るどころか、ボルトンの言葉に乗せられたのだ。
ボルトンは真っ先にペンスを説得し、ペンスに言わせた。
米国をなめるとリビアのようにしてやると。
「なめられたらいけない」
この言葉こそボルトンがトランプに翻意させた決め言葉だ。
トランプは単純で正直な男だ。
世界一のアメリカを標榜するトランプは「舐められる」ことに我慢が出来なかったのだ。
それともうひとつ。
ボルトンがささやいたのが、金正恩がトランプから習近平に寝返ったという言葉だ。
嫉妬ほど独裁者の心を揺るがすものはない。
米朝首脳会談の主役が、自分と金正恩ではなく、金正恩の後ろに習近平が要ると知った時点でトランプの顔色は変わったはずだ。
その証拠にトランプは米朝首脳会談延期の可能性を公言した時、はっきり口にした。
金正恩は習近平と二回目の会談をしてから変わったと。
これを要するに、トランプは、米朝会談に応じた時のトランプとは別人になったということだ。
あの時、自分の判断で北朝鮮の体制保証と引き換えに北朝鮮の非核化というディールを決めた。
それは真っ違いなかった。
しかし、まわりの強硬派の雑音に影響された時点でトランプでなくなったのだ。
トランプがトランプでなくなった時、もはやトランプは凡庸な米国大統領でしかない。
もし6月12日の米朝首脳会談が延期されるとそれは無期延期になるだろう。
米朝首脳会談が成功すれば皆が得する事になったが、不成立になれば皆が敗者だ。
その中でも、習近平と金正恩は同盟関係の確認・強化で得るものはあるが、南北平和の進展が不透明になった文在寅は敗者だ。
ノーベル平和賞どころかイランと北朝鮮という二正面作戦を強いられるトランプはもっと敗者だ。
そのトランプに従属するしかない安倍首相は、もはや出る幕はない。
安倍首相に残されたものは、疑惑究明に対する国民不信だけである。
米朝首脳会談の不首尾を内心で一番望んでいた安倍首相が、皮肉なことに、一番の敗者となるのである(了)
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