帰任した長嶺駐韓大使は、黄教安大統領代行に会えなかったばかりか、外務相、国防相、統一相との面会も決まらないという。
国防相、統一相に至っては、面会は困難だとまで言われてしまった。
安倍首相が帰任を急いだ大きな理由は、北朝鮮の危機に向けて韓国政府との連携を緊密に保つためだったに違いない。
それなのに、国防相、統一相との面会が出来ないのでは、何のために慌てて長嶺大使を帰任させたのかということになる。
それにしても、なぜ韓国政府はここまで長嶺大使との面会を拒むのか。
その理由を韓国外務省の報道官がはっきりと語っている。
「両国間の調整がない状況で対外的に言及したのは外交的に適切でない」と不快感を表明したという。
これは、長嶺大使が帰任直後に金浦空港で日韓合意の実施を求めていくと発言したことを指している。
しかし長嶺大使を攻めるのは酷だ。
長嶺大使は忠実に安倍首相のメッセージを伝えたに過ぎない。
安倍首相が韓国政府を困惑させたのだ。
つまり日韓合意を求めるために長嶺大使を帰任させたとする安倍首相の傲慢外交が裏目に出たのだ。
その一方で、振り上げたこぶしを下すためには、安倍首相としては、韓国政府に日韓合意を求めるために長嶺大使を帰任させたと言うほかはない。
圧倒的多数の韓国世論によって朴槿恵大統領が罷免され、その朴槿恵大統領が合意した日韓合意の見直しが大統領選の争点になっていることを直視できない安倍首相の傲慢な対韓外交がそもそも間違っているのだ。
しかし安倍首相には誤った対韓外交を改めることは無理だ。
そうであれば、せめて長嶺大使の帰任時期を5月に行われる大統領選挙の後にして、新政権とあらためて交渉すべきだった。
ここまで帰任を長引かせたのだ。あと一か月待てないはずはなかった。
安倍首相は長嶺大使の一時帰任を命じた時点で大きな間違いを犯したが、その帰任時期までも間違って、韓国との関係を難しくしている。
米国の言われたのか、あるいはいつまで長嶺大使を遊ばせておくのかという批判をおそれたのか、それは知らないが、どこまでも稚拙な安倍首相の唐突な長嶺大使帰任命令である(了)
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