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コロナ危機で露呈した米中対決と日本のジレンマ

 人類の危機とも言えるコロナ危機のさなかでも、いや人類を左右するコロナ危機のさなかだからこそ、米中の覇権争いは休止するどころか表面化した。

 それを見事に教えてくれたのが、どちらがウィルスを持ち込んだのかに関する米中の責任転嫁争いだ。

 仕掛けたのはトランプの米国だ。

 何しろ武漢ウィルス、中国ウィルスと言ってはばからない。

 国際批判にも動じない。

 直近の言動は、WHOが中国寄りだと言って拠出金凍結を言い出したことだ。

 トランプにとっては、戦後の国際社会の約束など、米国第一主義の前では無きに等しいのだ。

 しかし、中国も負けてはいない。

 武漢のウィルスは米軍が持ち込んだ可能性があると言い出した。

 これを聞いた米国はかんかんに怒った。

 そこまではまだ中国に分がある。

 なにしろ米国は世界最大の軍事覇権国だ。

 生体実験や生物兵器すら世界に先駆ける国だ。

 世界は、それもありうると思ってしまう。

 中国は何らかの根拠を持って、そうけん制したと世界が考えてもおかしくない。

 ところが、それを言い出した中国外務省の趙立堅副報道局長が7日の記者会見でこう述べたのには驚いた。

 「(中国に)汚名を着せようとした米国の一部政治家への反応だ」と。

 何のことはない。

 根拠もなく、誹謗合戦をしていたわけだ。

 どっちもどっちだ。

 もはやコロナ危機で米中覇権争いは決定的になった。

 そして、ひょっとしたら中国はこのコロナ危機で、米国に勝つことを世界に見せつけるかもしれない。

 それが武漢の封鎖解除だ。

 今度のコロナ危機の発生源である武漢は、ついにきのう4月8日、2か月半ぶりに都市封鎖を解除した。

 欧米が封鎖の真っ最中であり、最後に遅れて封鎖に踏み切った日本が封鎖をめぐって大騒ぎをしている中で、コロナ危機を発生させた悪者の中国が、いち早くコロナ危機を克服したのだ。

 その象徴として武漢の封鎖解除を行ったのだ。

 もちろん、その少し前に、コロナ危機で亡くなった犠牲者に対する大規模な追悼式を行っている。

 まさしくコロナ危機を克服したと世界に見せつけようとしているのだ。

 これを政治的パフォーマンスと決めつけるのは簡単だ。

 感染者数をごまかしている、徹底した封鎖は人権を無視した中国だからできたのだ、などと批判するのは自由だ。

 しかし、もしまったくのウソなら、封鎖解除で再びコロナ危機は中国に蔓延する。

 その時こそ取り返しがつかなくなる。

 そんな愚を習近平の中国がおかすだろうか。

 ひょっとして中国は徹底してコロナウィルスと戦い、収束のめどをつかんだのではないか。

 我々は中国嫌いから脱却して、コロナ危機の克服を最初から中国と連携して進めるべきではなかったのか。

 そう思っていたら、きょう4月9日の読売新聞が報じた。

 日本と中国、韓国の3カ国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が来週にも首脳によるテレビ会議を開く方向で調整している事が8日わかったと。

 コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、治療薬の開発に関する情報共有や医療物資の支援などで連携していく方針を確認する見通しであると。

 これこそが1990年にマハティールが提唱した東アジア共同体構想の実現だ。

 あの時、日本がマハティールの提案に乗っていれば、日本外交も国際政治も今とは大きく変わっていたと思う。

 しかし、米国の圧力で日本は一蹴した。

 そしていま日本は、米国の言いなりになって、中国との戦争に参戦する国になろうとしている。

 これほど大きな岐路にさしかかっているのに、国民的議論が起こる気配はない。

 それどころか、国民の多くは中国、韓国との協力よりも、日米同盟最優先だと思っている。

 私は中国のコロナ危機克服が本物であることを願う。

 コロナ危機との戦いで中国が米国に勝つことを願う。

 そして、トランプ・安倍両首脳の退陣と共に、日本外交が大きく変化することを期待する。

 コロナ危機が日本の政治も国民意識も変えてくれる事を期待する。

 ピンチがチャンスになる事を願う(了)

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