きょう3月25日の各紙やテレビがトップニュースで繰り返し取り上げているのが、「東京五輪の1年程度延期」だ。
なぜこんな当たり前のことがこれほど大きなニュースになるのか。
コロナ危機が世界的規模に爆発し、いまや米国が最大の危機国になろうとしている。
そんな中で、予定通りの五輪開催にこだわり続ける日本に、世界中から批判が集中し始めた。
だから延期せざるを得ないことは、時間の問題だったはずだ。
メディアも世論も、皆わかっていたはずだ。
それなのに、なぜここまでメディアは大騒ぎをするのか。
もちろん、「そうなるだろう」ということと、「そうなった」とでは、決定的に違う。
だから、そうなった時点で、大きなニュースになるのはわかる。
しかし、メディアが大きく報じた理由は、それだけではないのだ。
ズバリ、五輪延期は安倍政権の命運に直結するからだ。
中止になれば、その時点で安倍政権は死に体になったはずだった。
なにしろ、安倍首相と近い鈴木俊一元自民党総務会長、元五輪担当相が、はやばやと、それを公言したほどだ。
だからこそ、安倍首相は中止ではなく延期にこだわり、そのアリバイ作りである「完全な形の実施」を事あるごとに繰り返し、そして、昨晩のバッハ会長との電話協議の直後の記者会見で、真っ先にその事を強調した。
私の方から延期をお願いして100%同意していただいた、と。
メディアが大騒ぎしたのは、これで安倍首相は五輪まで首相を続けることになると言っているのだ。
そして、安倍首相が政局に利用したのは、単に「延期を取りつけた」だけではない。
より重要なのは、「1年程度の延期」を取りつけたところだ。
しかも、安倍首相の頭にあるのは、2021年の秋以降ではなく、秋以前、つまりこれから1年以内の開催なのだ。
なぜ1年以内なのか。
それは2021年9月には自民党総裁選がある。
東京五輪の成功を背にして自民党総裁選で勝ち、解散・総選挙に打って出て勝利し、4選を目指す目論見だ、と解説する向きもある。
しかし、私はそうは思わない。
もはや安倍首相には、自ら招いた内政・外交の失敗を取り戻す能力も気力もない。
頼りのトランプ大統領も再選が見通せなくなってきた。
そして、たとえトランプ大統領が再選されても、トランプ大統領はますます米国ファーストになり、4選を果たして対米従属を続ければ、日本を滅ぼす事になる。
それを一番よく知っているのは安倍首相自身だ。
もう十分だ。五輪後は岸田氏に禅譲し、東京五輪を文字通り最後の花道にしたい。
私は安倍首相はそう考えていると思っている。
言いかえれば、東京五輪を自分の手で主催できないまま退陣することは、有終の美を飾れずに野垂れ死ぬことなのだ。
「死んでも死にきれない」のだ。
私が安倍首相の昨晩の記者会見の言葉を聞いて、「五輪延期を延命に利用した安倍首相の権力の私物化」と書いた意味はまさしく、ここにある。
しかし、私はそれを許さない。
これ以上権力の私物化を許してはいけない。
森友学園に見せた権力の私物化が再調査された段階で、すぐに辞めなければいないのだ。
そして、昨晩の記者会見には、「権力の私物化」とならぶ、安倍首相のもう一つの大罪、すなわち、「虚偽答弁」があった。
この事については次回に書くこととする(了)
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