いよいよ国会が始まる。
どれひとつとっても安倍政権が倒れておかしくな問題を抱えた国会だ。
しかし安倍首相は逃げ切る。
その理由は、あまりにも審議時間が少ないからだ。
きょう始まる国会は、安倍首相らが所信表明演説を読み上げて終わる。
来週の国会は、その演説に対する代表質問で終わる。
代表質問はお互いが国民に向かってその存在感を示すだけの歌舞伎芝居のようなものだ。
野党はその演説を非難し、政府はみずからの正しさを主張して、言いっぱなしで終わる。
本格的な論戦はその後に続く予算委員会であるが、安倍首相の外遊や天皇陛下の即位の礼で予算委員会はほとんど時間がない。
即位の礼では安倍首相と各国要人の首脳会談が繰り返され、安倍外交のひとり舞台となる。
11月に入っても安倍外交の日程はめじろ押しだ。
そして12月初めに国会は終わる。
ほとんど論戦の時間がない。
その一方で、追及すべき内外の問題は、どれから手を付けていいかわからないほど数多くある。
ところが、野党はバラバラのまま、見せ場は自分たちの党だと言わんばかりに、質問の的を絞り切れないまま、各党が安倍批判を競い合う。
どう考えても野党の負けだ。
そんな中で、ひとつだけ、野党が安倍首相を追いつめる最強の切り札がある。
それは日米貿易協定についての追及だ。
なにしろ、これは国民に本当の事が知らされないまま成立させられようとしている密約だ。
そして今度の国会で安倍首相が最優先して成立させたい密約だ。
これだけは、強行採決してでも成立させるつもりだ。
そのことを茂木外相がきょう10月4日の日経新聞のインタビューで堂々と公言した。
「日米貿易協定の発効時期はいつを目指しますか」、という質問にこう答えている。
「臨時国会に協定案を提出する。丁寧に説明してご了解いただきたい。米国は2020年1月1日に発効したいのであれば日本として異存はない」と。
これは物凄い発言だ。
何があっても今度の国会で日米貿易協定を成立させると言っているのだ。
安倍首相が茂木大臣を外務大臣に横滑りさせた理由は、日米貿易交渉を一手に引き受けた茂木大臣に、外相として国会答弁をまかせるということだ。
日米貿易協定は密約だから交渉を担当した茂木大臣しか本当の事を知らない。
だから茂木大臣は野党のどんな追及もごますことができる。
そして最後は強行採決して通すつもりだ。
かつて安倍首相は2015年4月29日、米国の上下院合同委員会で安保法案を成立させると約束した。
日本国民に十分な説明もせず、国会で反対論が沸き上がっている中で、米国議会と米国国民にそう約束したのだ。
これほどの対米従属はない。
いままさに同じことが繰り返されようとしている。
安倍首相との首脳会談で日米貿易協定を合意した後、トランプ大統領はその合意を来年1月1日から実施すると発表した。
茂木大臣はその発効に異存はない、えらそうなことを言っているが、異存出来るはずがないのだ。
安倍首相はトランプ大統領に約束してしまったのだ。
今度の国会で成立させなければトランプ大統領との約束違反になる。
トランプ大統領は激怒する。
日米関係が危うくなる。
そんなことは安倍首相にできるはずがない。
安保法の時と全く同じだ。
日本国民や日本の国会の了解もないまま米国に約束し、それを国会で強行成立させるしかないのだ。
野党にその覚悟があるなら、もちろん体を張って阻止できる。
密約のすべてが明らかにされないまま認めるわけにはいかないと、反対すればいいのだ。
そうなれば安倍首相は強行採決した後に、国民の信を問うといって解散・総選挙に打って出るしかない。
私は今の安倍首相は解散・総選挙などしたくはないし、そのつもりもないと思ってるが、野党が日米貿易協定に反対するなら、それしかないのだ。
今の野党には、しかし、解散・総選挙を受けて立つ覚悟はない。
野党はおめおめと日米貿易協定案を通すほかはない。
そして、日米貿易協定を成立させるようでは、何を追及しても安倍政権は倒せない。
これを要するに、今度の国会で野党が何を追及しても、解散・総選挙の覚悟がないなら、すべては無意味なのだ。
始まる前から結論が見えている、あまりにも不毛な今度の国会である(了)
Comment On Facebook