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日米貿易協定が署名できなくなった裏を読み解く

 NHKの早朝ニュースがスクープした通り、一夜明けてきょうの各紙が一斉に報じた。

 25日のトランプ・安倍会談で署名にする運びになっていた日米貿易協定が、今回は見送られることになったと。

 もちろん、それをごまかすための何らかの文書が作成され、署名されることになるらしい。

 しかし、それは日米貿易協定ではない。

 日米貿易協定の交渉はこれからもさらに続けられるのだ。

 いったん発表していきながら署名できなかったことは、前代未聞の異常な事態だ。

 政府は事前に日本のメディアに流し、メディアはそれを信じて報じた。

 今度の国連総会で日米貿易協定は署名されることになると。

 それが突如として、よりによって安倍首相訪米直前に覆ったのだ。

 日本にとって想定外のハプニングだったに違いない。

 なぜこんな異例なことが起きたのか。

 その原因は、ズバリ、なんでもありのトランプ大統領の一言にあったに違いない。

 いったいトランプ大統領はどう注文をつけたのか。

 これまでの報道を振り返って、私が今度のドタバタ劇の裏を読み解くとこうだ。

 そもそもなぜトランプが日本との二国間貿易協定を安倍首相に迫ったのか。

 それは、ズバリ、米国抜きのTPPが発効すれば米国がTPP加盟国との間で不利な扱いを受けるからだ。

 だったらTPPに加入しろという話だが、トランプにはそれは通用しない。

 その一方で、日本としては、TPPの加盟国との手前があるのでTPP以上の譲歩を米国と二国間でするわけにはいかない。

 そんなことをすればTPP加盟国が怒り出すからだ。

 メディアが頻繁に報じてきた、「日本が米国に譲れる最大限の水準はTPPで合意した水準だ」というのは、一方において農業などの国内産業向けの合言葉だが、他方においてTPP加盟国向けのメッセージでもあるのだ。

 しかし、この二つの要求、つまり米国第一のトランプの要求と、最大限でもTPP水準の譲歩しかできないという日本の立場を両立させるのは、至難の業だ。

 そこで茂木大臣とライトハィザー米通商代表との間で玉虫色の合意でごまかしてトランプ大統領と安倍首相に署名させようとした。

 日米貿易協定自体は肝心なところを曖昧にし、本当の約束は政府間取り決めなどの密約で書き込もうとしたのだ。

 安倍首相は、そのようなシナリオを茂木大臣や官僚から聞いても驚かない。

 いつも使う手だからだ。

 ところがトランプ大統領はそんな面倒なやり方は通じない。

 自分の支持者にわかりやすい成果を強調しなければいけない。

 そこで、ライトハイザーから聞かされた日米貿易協定案の書き直しを命じたのだ。

 いくらなんでも、署名直前にそんなことを言われても、茂木大臣もライトハイザー代表も、すぐには修正案はつくれない。

 ましてや合意までたどり着けない。

 だから今度の首脳会談では貿易協定案の署名は見送り、だからといって何も署名せずに物別れに終わったなら首脳会談は失敗になるから、これまで合意した内容の確認と今後の交渉の論点を整理した文書など、何らかの文書を急きょ作って、それに署名する格好をつけるのだ。

 その文書は、誰が見ても当たり前のような合意を書いた公表部分と、決して公表されない密約の部分が存在する。

 はたしてこの私の推論があたっているかどうか。

 私は25日の日米首脳会談後の記者会見に注目する。

 隠そうとする安倍首相と、なんでもしゃべってしまうトランプ大統領が、日米首脳会談の後の記者会見でどのような発言を一緒に、あるいは個別に、行うのか、けだし見ものである。

 メディアがどう質問し、どう解説するのか、けだし見ものである(了)

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