私の長い外交官人生において、ブッシュ大統領(父)やアラファトやマンデラなど、国際政治を動かすプレーヤーと直接あって言葉を交わす機会に恵まれたことはよかった。
マレーシアのマハティール首相もそのうちのひとりだ。
その中でも特にマハティール首相は、米国のパレスチナ政策に一貫して批判的であり、そしてあのイラク攻撃を止められなかった国連のアナン事務局長を、その責任を取って即刻辞任すべきだと発言するなど、私にとってもっとも尊敬する指導者だ。
そのマハティール首相が90歳を超えて再びマレーシアの首相に返り咲き、マレーシアの憲法に日本の憲法9条を取り入れると発言したことは私を勇気づけてくれた。
それにとどまらず、世界の国々は憲法9条を取り入れよと提唱して私を驚かせた。
ますます私はマハティール首相のフアンになった。
ところが、きょう5月11日の朝日と日経が、それぞれ「マハティール首相 苦境」(朝日)、「マハティール氏 いばらの道」と、奇しくも同じような記事を掲載した。
すなわち、きのう5月10日で首相に返り咲いて丸一年経ったが、ここにきて、支持率が激減しているというのだ。
財政再建が思うように進まないとか、成長戦略が見えてこないとか、マレー民族優遇政策を見直そうとしたからだとか、様々な理由が挙げられている。
しかし、私が残念に思ったのは、朝日と日経が共通してこう書いていたところだ。
マハティール首相は、今度の政界復帰に際しては、かつて自ら追放したアヌワール元副首相と和解し、アヌワール元副首相と組んで選挙に勝利し、そして今度こそ2年でアヌワール元副首相に首相の座を禅譲すると公約していた。
私はそれを高く評価した。
ところが、ここにきてマハティール首相は任期について言葉を濁すようになってきたという。
あと3年やるか2年やるかわからないと言い出したという。
そんな事を言うようではおしまいだ。
今度こそアヌワール元副首相との約束を反故にしてはいけない。
権力につけば、マハティール首相と言えども、その権力を手放し難いのか。
マハティール首相 あなたまでもか
そういう思いで私は朝日と日経の記事を読んだのである(了)
Comment On Facebook