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習近平の中国を手玉に取った見事なマハティール外交

 二日ほど前の日経新聞が大きく報じていた。

 マレーシアと中国が鉄道建設の再開に向けて合意したと。

 すなわち、ナジブ前政権がいったん合意したマレーシア東海岸鉄道建設を、マハティール首相は昨年5月に政権を取り戻した直後に、建設費の負担が大きすぎると言って白紙に戻した。

 その鉄道建設計画を、建設経費の大幅な削減で再開する事でマレーシアと中国が合意したというのだ。

 見事なマハティール外交である。

 中国としては一帯一路の成功の為に、一つでも多くのプロジェクトを誕生させたい。

 しかし、借入金の返済負担が大きすぎる事を理由に受け入れ国の辞退が相次ぎ、おまけに中国批判まで出て来た。

 ここは貸付金の元利を減らしてまでもマレーシアの合意を取り付けたかったのだ。

 一方のマレーシアも、東海岸鉄道の建設は捨てがたい。

 経済負担が縮小されるなら中止する理由はどこにもない。

 かくて両国の利害が一致し、費用の大幅圧縮で再開合意に至ったというわけだ。

 習近平を相手にしたマハティール外交の見事な勝利である。

 安倍外交はマハティール外交の爪の垢でも煎じて飲むべきだ。

 しかし、私がこの日経新聞の記事で注目したのはそれだけではない。

 その記事に掲載されていた一枚の写真に私の目は釘付けになった。

 その写真には、中国側代表と合意文書を交わすマレーシア代表のダイム・ザイヌディン氏の姿が映っていた。

 彼こそが、私が1990年に在マレーシア日本大使館に公使として勤務していた時のマハティール首相の政務秘書官だった男だ。

 マハティール首相に伝えたい事があった時は、真っ先に相談する私の仕事相手だった人物だ。

 そのダイム・ザイヌディン氏が、今度の交渉を、マハティール首相の命を受けて一手に引き受け、そして合意にこぎつけたのだ。

 あれから30年近くの歳月が経ち、さすがの彼も老人の風情を漂わせているが、その手腕は健在だということだ。

 マハティールの腹心であることもそのままだ。

 私の外交官時代を昨日のように懐かしく思い出させてくれた、マレーシアと中国の鉄道建設再開合意のニュースである(了)

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