昨日(3月25日付)の日刊ゲンダイが教えてくれた。
22日の衆院文部科学委員会で、川内博史議員(立憲民主)が追及したと。
1月末の国会冒頭で安倍首相が行った施政方針演説の児童福祉手当増額や給付型奨学金の創設を巡る部分で、英訳が不正確な訳文になっていたと。
すなわち、日本語の施政方針演説では、「進学率を進める中で、これら施策を導入する」、という文脈で使われていたが、英訳では「これら政策を導入した結果、進学率が高まった」、と受け取れるように英訳されていたというのだ。
日本語と英語の訳文における食い違いが、単なるミスではなく意図的なごまかし訳であることは、これまでにも数多く指摘されて来た。
その直近の例は、やがて始まる日米貿易交渉の英訳を、わざわざ、農産品や自動車などのモノに限った物品貿易協定(TAG)と訳し、サービスも含む自由貿易協定(FTA)見なす米国との食い違いが露呈した例だ。
そして、私が直接目撃したドンでもない意図的誤訳の例が、砂川判決の再審査請求訴訟の中で使われた米国の極秘公電の和訳である。
米国の極秘公電の中に、田中耕太郎最高裁長官とマッカーサー駐日米国大使が都内某所で繰り返し極秘会談を重ね、「駐留米軍は憲法9条違反である」と断じた東京地裁の判決(いわゆる伊達判決)を差し戻す約束を交わした証拠を示すくだりが出て来る。
この部分の英語はPRIVATE CONVERSATIONとなっているが、外務省が再審査請求裁判の過程で東京地裁に提出した和訳によれば「非公式な会話」となっていた。
明かな誤訳である。
情けない事に日本の裁判所は原文(この場合は英文)をそのまま読む事をせずに、和訳を政府側に要求して審理を進める。
そこで原告側がこの政府側による「非公式」という役にクレームをつけたため、裁判所は被告である政府側と原告である有罪判決を受けた元反戦活動家側の双方に米国極秘公電の和訳の作成を命じ、原告側は「密議」とする訳文を提出し、これが裁判官の採用するところとなった。
このような日本語と英語の間の意図的誤訳は調べ出したら驚くほど多く、見つかるに違いない。
施政方針演説のごまかしはまだ害は少ない。
しかし、意図的誤訳の中には日本国民の判断を誤らせる深刻な誤訳もある。
偽装まみれの安倍政権であるが、英語に弱い日本国民をごまかす外務官僚の意図的誤訳は悪質であり、国益を失うほど深刻である。
それを想起させてくれた日刊ゲンダイの記事である。
本来は大手新聞こそ大きく取り上げて安倍政権を批判し、国民に知らせる役割を果たすべである(了)
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