新党憲法9条

憲法9条それは希望

日米安保条約の欺瞞を国民に知らせた矢部宏治氏の偉大さと限界

 矢部宏治氏から「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないのか」の新書版(「講談社α文庫」)の献本を受けた。

 これは彼が5年前に集英社インターナショナルから出版した同名の本を文庫にしたものである。

 しかしこの本の価値はその「あとがき」にこそ意味がある。

 そこで矢部氏は、日米安保条約が、朝鮮戦争のさなかに、米国の日本占領政策の張本人であるダレスの了解を得た一人の米国軍人、カーター・B・マグルーダー陸軍少佐の手によって起草されたことを明らかにした。

 つまり日米安保条約は、戦時に、軍人によって起草された条約だったのだ。

 日本の主権が無視されているのは当然なのである。

 しかも、旧安保条約の不平等条約をなくしたと喧伝されている岸信介首相による新安保条約もまた、そっくりそのまま、数々の密約によって旧安保条約を引き継ぎ、今日に至る日米合同委員会と日米安保協議委員会(いわゆる外務・防衛閣僚協議ー2プラス2)によって、国民の知らないままに実行されている、という驚くべき新発見を、「あとがき」で明らかにしている。

 ここまで日米安保の欺瞞を白日の下にさらしてくれた人物を私は知らない。

 著名な学者でも研究者でもないただの出版関係者が、ここまでの発見をし、それを国民に知らせてくれたことは驚くべきことだ。

 矢部氏の偉大さはここにある。

 しかし、私がここで言いたいのは彼の偉大さではない。

 彼の限界だ。

 ここまでの事実を矢部氏は明らかにしたのだ。

 そして今では矢部氏に続いて、かなりの者が、日米安保の欺瞞と米国の日本占領時の不都合な真実を明かしている。

 かつてはタブーだった昭和天皇の対米従属ぶりも、公然と、しかも週刊誌や大衆紙ですら、書くようになった。

 それにも関わらず、日米同盟最優先のこの国の方針は変わらず、日米関係が不健全なまでに対米従属になっても、政治は動かず、世論は反発しようとはしない。

 だから、もはやいくら日米関係の不平等性や日米安保の密約ぶりを書いたり、告発しても、意味がないのだ。

 あとは政治を変えるしかないのだ。

 私はそう矢部宏治氏に言い続けてきた。

、どうやら矢部氏も私のその考に理解を示したと見えて、今度の文庫版「あとがき」でそのことに触れている。

 しかしである。

 これから書く10行ほどが、私のこのメルマガで言いたいことである。

 矢部氏はこう言って政治家に檄を飛ばしている。

 「安保再定義」と「日米地位協定改定」と「砂川裁判・最高裁判決の無効化」の三つで、まず野党(彼の念頭にあるのは立憲民主党である)の指導者が合意し、それに自民党の良識派も足並みをそろえてみてはどうか、と。

 それができない政治家たちは日本の国の政治指導者の座からいますぐ退場させるべきだと。

 そうではないのだ。

 既存の政党、政治家に頼る限り、いつまでたっても日米安保体制は変えられない。

 本気で日米安保体制を変えようとするなら、それができる新しい政党、政治家を誕生させ、政治を変えなければいけないのだ。

 それが私が新党憲法9条を作ろとしている一つの大きな理由である。

 私と矢部氏の間には、いつまでたっても埋まらない溝がある(了)

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