徴用工判決について、その後も、日本は国をあげて韓国批判が止まらない。
政府もメディアも与党も野党も、日韓関係の前提が崩れた、基盤が損なわれたと大騒ぎをしている。
しかし、日韓関係が崩壊して困るのは日本のほうだ。
日韓国交正常交渉と日韓請求権交渉こそ、国民に真実を知らせずに行われた一大交渉であり、その合意は政治的妥協の密約だったのだ。
その交渉の闇が明らかにされた時、抵抗力が弱いのは日本国民のほうだ。
大騒ぎになるだろう。
その事を知っている者はいまではほとんどいない。
私の知識は、彼らが残した記録を通じての知識でしかない。
そう思っていたら、きょう11月1日の朝日新聞に町田貢元駐韓公使(83歳)の言葉を見つけた。
彼は韓国語を研修した韓国専門の外交官だ。
金鐘泌韓国中央情報部(KCIA)部長と大平正芳外相との会談をはじめ、当時の交渉に通訳として立ち会った人物だ。
日韓関係に関する仕事ぶりは、外務省の中でも高く評価され、退官後はソウルに在住している。
その町田氏が次のように語っている。
請求権合意は、日本が朝鮮半島を統治した時代の行為への賠償として、双方の立場の大きな隔たりから始まって、難交渉の末、政治決着されたものだと。
日本は30年もの間朝鮮半島を統治したから色々な問題があったと。
全部議論したらいつまでたっても国交正常化出来なかったから、お互いが事情を理解した上での政治判断だったと。
過去の取り決めであっても、現在の判断で覆して構わないという韓国の国情の背後にあるのは、「民族を抹殺して統治した日本への遠慮はいらない」という感情が根底にあると。
そして町田氏は次のように締めくくっている。
「ここまで来たら、お互いに公開の場で議論しつくす以外、関係改善の道はないだろう」と。
公開で議論することほど日本人にとって苦手な事はない。
ましてや今の日本人は、歴史に暗く、それゆえに右翼的で、相手を一方的に批判する者が増えつつある。
このままでは日韓関係の早急な改善は望めないと町田氏は危惧しているのだ。
日本有数の韓国専門家で元外交官の町田氏のこの言葉は、値千金の警告である。
その事を理解して読んだ読者はどれほどいただろう(了)
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