鳴り物入りで行われた安倍訪中も終わった。
その安倍訪中をきのう10月27日の大手紙は一斉に社説で限定的に評価した。
前進した事は良かったがすべてはこれからだと。
棚上げした困難な問題を克服できるかはこれからだと。
経済協力だけで乗り切れるのか、米中対立が激しくなる中で日本は板挟みになるおそれはないかと。
それでも最悪の関係から一歩前進した事は評価できると。
私もそう思う。
誰もが考える評価であり、誰もが抱く懸念だ。
そんな中で、ひとり産経の社説だけが、「今度の安倍訪中は砂上の楼閣に終わる」と否定的に評価をした。
それからわずか一日たって、やはり産経が正しかった。
そう思わせるスクープ報道を、奇しくもきょう10月28日の読売と毎日が書いた。
その要旨はこうだ。
つまり、安倍首相は李克強首相、習近平主席との会談の後、自らのツイッターやフェイスブックで書き、ご丁寧にフジテレビのインタビューでも自慢した。
今度の訪中では、今後の日中関係の道しるべとなる三原則を確認したと。
その三原則とは次の三つだ。
1.競争から協調へ
2.日中はパートナーであり、互いに脅威とならない
3.自由で公正な貿易体制の維持
本当に、この三原則で合意したなら、今度の安倍訪中は歴史的な前進である。
ところが、三原則で合意したとは、中国外務省の発表にはどこにも出て来ない。
李克強首相も習近平主席も、三原則などという言葉を発していない。
どうなっているのか。
そこを同行記者団からつかれた西村康稔官房副長官は、「三原則という言い方はしていない」と釈明し、外務省幹部も、「原則は呼びかけたが三原則という言葉は使わなかった」と重ねて否定したというのだ。
これは重大な食い違いである。
なぜ、このような食い違いが起きたのか。
それは明らかだ。
安倍首相としては、過去の四つの歴史的基本文書につぐ五番目の文書をつくりたかったが間に合わなかった。
そこで、口先だけでも三原則の合意が出来たと改ざん発言して、今度の訪中の成果を前のめりに誇大宣伝したかったのだ。
その矛盾を突かれ、なぜ西村官房副長官や外務省幹部は、安倍首相の発言を否定せざるをえなかったのか。
もちろん、それは事実に反するからである。
しかし、それだけではない。
来年6月に期待される習近平主席の訪日の際にはこの三原則を文書にして第五の基本文書を何としてでも作りたい。
そう安倍首相から西村官房副長官や外務省は厳命されている。
しかし、果たして中国がそれに応じるか保証はない。
後退した表現に終わると日中関係が前進どころか停滞したと受け止められる恐れがあるからだ(毎日)。
おまけに、はたして習近平主席は来年6月に訪日するのか。
今回の首脳会談で安倍首相は招待したけれど、習近平主席は確約しなかった。
きょうの読売と毎日のスクープ報道が教えてくれた事。
それは今度の安倍訪中は、安倍首相お得意の、事実を改ざんしてまで宣伝する日中友好関係の構築外交に過ぎなかったのだ。
「砂上の楼閣」だと書いた産経の社説が正しかったのだ。
ところが、この改ざん発言を、産経は書かない。
インタビューまでしているのにである。
やはり産経はダメ新聞である(了)
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