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安倍首相に手柄を献上することになった対中ODA終了の皮肉

 安倍政権は約40年にわたって実施して来た対中ODA(政府開発援助)を、本年度を最後に終了する方針を決め、明日からの訪中時に発表するという。

 このニュースの裏には様々な意味があるが。こんなこと書けるのは私ぐらいだろう。

 つまり安倍首相にいいとこどりをさせてしまったということである。

 私は外務省35年の勤務の中で、ODAを担当していた時期が長かった。

 私が担当した案件の中には、いま話題になっている日韓国交正常化に伴い実施された対韓国援助のフォローアップや、ベトナム戦争が終結し、統一ベトナムになった時の初めての援助供与などがあり、その裏表を知る貴重な経験を私はしている。

 対中国ODAもその一つだ。

 私は、1979年に大平首相が訪中した時に初めて中国に供与したODAの担当官だった。

 当時、政府内では、やがて中国は日本の援助で経済発展し、日本の脅威になる、そんな援助をしてもいいのかという議論が一部にあった。

 しかし、中国をおそれて援助をしないという選択肢はないというのが私を含めて大勢だった。

 何よりも、中国と友好関係を維持・発展させるという強い意思を持った大平首相の下でその決断はなされた。

 やがて中国は日本のODAの最大の受益国となり、経済大国になった。

 日本の援助が中国の経済発展にどこまで貢献したかを数字で実証する事はもちろん困難だが、間違いなく日本の援助は中国の発展を支え、それを中国も知っているはずだ。

 対中ODAの難しさは、それをいつ止めるかだった。

 そして私が外務省にいる間にその時期はやってきた。

 中国はいわゆる日本のODAの対象である経済基準を超えるまでになり、やがて援助供与国にまでなったからだ。

 しかし、何事も、始める時は喜ばれるが、止める時は抵抗にあう。

 そして、対中ODA打ち切りは、日中関係が悪化した時には出来ない。

 なぜなら、それが日中関係悪化と結びつけて喧伝される恐れがあるためだ。

 結局、私が外務省にいる間は、対中援助は続けられた。

 報道によれば、ODAの大部分を占める円借款は2007年度の新規供与を最後に終了したらしいが、その後10年以上にわたって、大気汚染や感染症対策など日本にも影響が及ぶ分野での無償援助や技術援助が続いていたらしい。

 その間に、民主党政権に替わり、その時に対中ODA供与打ち切りの決定は出来たはずだが、外交に弱い民主党政権の下で尖閣国有化によって日中関係が一気に悪くなり、とても対中ODAの終了など出来るはずはなかった。

 その後も援助は続き、そして今度の安倍政権下での打ち切りだ。

 もっとはやく終わってもおかしくなかったのに、それが出来たのはやはり大きな政治決断だ。

 それができたのははやり安倍1強だからだ。

 しかも決して中国が反発することはない。

 中国もまた日本から援助をもらう国から卒業していることを十分知っているからだ。

 なにしろ、一帯一路を提唱するまでになり、世界経済発展のため日本と同等、いやそれ以上の援助国となろうとしているからである。

 そして、なによりも、これまでの日本の援助に感謝している。

 日本は感謝されて当然なのだ。

 かくして日本の対中援助打ち切りは、日中両政府の合意の下で、中国の感謝の下で、行なわれる事になる。

 おまけに安倍首相が一帯一路に舵を切って中国に歓迎される。

 こんな事は、本来なら中国との良好な関係を持つ政権の下で行われるべきであるのに、それをやろうとする政権はなかった。

 いま中国と最も敵対的な安倍政権の下で、対中ODA援助打ち切りが行われるのは皮肉だ。

 しかもそれが安倍首相の今度の訪中のお土産になる。

 それまでの政権は何をボヤボヤしていたのか、と言う事である。

 みなが安倍政権に手柄を献上しているごとくである。

 これではとても安倍政権は倒せない(了)

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