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北朝鮮どころではなくなったポンぺオ国務長官

 ポンぺオ国務長官も大変だ。

 北朝鮮との非核化交渉が長引き、米朝首脳会談が来年に先送りされそうだからではない。

 突如としてサウジアラビア政府によるジャーナリスト殺害事件が大騒ぎになったからだ。

 その事件のもみ消しをトランプ大統領に命じられ、サウジアラビアを擁護しなければならなくなったからだ。

 実際のところ、こっちの仕事の方が北朝鮮の非核化交渉よりはるかに厄介だ。

 黒を白といいくるめなければいけないからだ。

 事件の終結を急がなければならないからだ。

 来年まで長引かせるなどと、のんきな事は言っておれないからだ。

 私はこの、サウジアラビアによるジャーナリスト殺害疑惑については、事件が発生した時からさめた思いで見て来た。

 サウジアラビアに勤務した経験から、サウジアラビアの王族支配がいかに非民主的で、野蛮で、腐敗しているかを知っていたからだ。

 砂漠の遊牧民に過ぎなかったサウジが、たまたま石油によって世界一富裕な国になり、皆がその資金に群がり、サウジアラビアを増長させた。

 石油と王族支配を守るために、アラブの大義を裏切って米国とイスラエルに近づき、いまや言いなりだ。

 しかもである。

 今の国王サルマンは、サウジアラビアの慣例を破って自分の息子ムハンマドに全権を渡してしまい、そのムハンマドはやりたい放題だ。

 カショギ記者ならずとも批判したくなる。

 しかし、これほど証拠が出て来ても、ムハンマドが殺害を命じたという事にはならない。

 さすがにカショギが死んでしまった事は認めざるを得なかったが、喧嘩になって殺されたなどと、誰でもわかるウソで終わらせようとしている。

 そして、そのごまかしにトランプが手を貸そうとしているのだ。

 それは、トランプがサウジアラビアに武器を売りたいからだけではない。

 自分のビジネスが絡んでいるだけではない。

 いまやすっかり米国とイスラエルの手先になってしまったムハンマド皇太子を犯罪にして失脚させることは出来ないからだ。

 ポンぺオ国務長官は大変だ。

 国際的な世論を敵に回す形でトランプのウソの片棒を担がなければいけないからだ。

 下手な事をすればトランプから首にされる。

 米朝首脳会談が来年まで先延ばしされたのは、その前にこの事件をうまく切り抜けなければいけないからだ。

 もちろん、それは冗談だ。

 北朝鮮との非核化交渉に手間取っているからだ。

 しかし、米朝首脳会談が先延ばしになったのは、このサウジアラビアのカショギ殺害事件がこれから世界の批判の的になり、トランプを追い込むおそれが出て来たからだ。

 そうならないように、事件のもみ消しを最優先させなければいけいからだ。

 そう思いたくなるほど厄介な問題がトランプに降りかかったという事である(了)

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