きょう10月20日の各紙が一斉に、しかし、小さく報じた。
韓国の大法院(最高裁)は19日、徴用工訴訟に関する判決を10月30日に言い渡す事を発表したと。
しかし、これは日韓関係を揺るがす大きなニュースだ。
10月30日の各紙は、この判決について、こぞって一面トップで大きく報じる事になる。
徴用工とは、朝鮮半島の日本統治時代に製鉄所で強制労働させられた韓国人の事だ。
徴用工訴訟というのは4名の徴用工が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に対し損害賠償を求めた訴訟だ。
個人の損害賠償請求権は1965年の日韓請求権協定で解決済みか否か、それを巡って訴訟は二転、三転してきたが、ついに今度の大法院で最終的な判決が下される事になる。
そもそも、この訴訟は、李明博政権下の1912年5月に、最高裁がそれまでの一審、二審の判決を覆して、「個人請求権は消滅していない」として差し戻しを命じた事から大きな政治問題化した。
そして、政権が朴槿恵政権に替わった2013年7月の差し戻し判決で、ソウル高裁は新日鉄住金側に賠償を命じる原告勝訴の判決を言い渡した。
これに対して新日鉄側は、「請求権は消滅した」とする日本政府の見解に基づき上告した。
ところが、朴槿恵政権下の最高裁は、5年以上も確定判決を引き延ばし、その間に政権は朴槿恵政権から文在寅政権に交替した。
そしてついに10月30日、文在寅政権下ではじめて最高裁が判決を言い渡すのだ。
30日に下される判決は、元徴用工の要求を認め、新日鉄住金側に賠償を命じる判決になるだろう。
日本ではほとんど報じられていないが、韓国では朴槿恵大統領が日韓関係の悪化を恐れて最高裁に政治圧力を加えて判決を引き延ばしていた、という疑惑が大問題になっていたのだ。
その事を私は韓国のジャーナリストから聞いて知っていた。
あたかも日本の司法が安倍政権の政治圧力に屈しているという批判と同じだ。
韓国の場合は世論の怒りが日本と違って半端ではない。
だから文在寅大統領は司法の判断を尊重するしかないのだ。
そもそも、日本政府が一貫して主張して来た、「個人請求権は1965年の日韓請求権協定により完全、かつ最終的に解決済み」、という主張そのものに疑義が持たれ始めたのだ。
つまり、日本の植民地支配の合法性について日韓両国が合意しないまま1965年に結ばれた日韓請求権協定そのものの妥当性が問われ始めたのだ。
この問題は安倍首相の歴史認識と直結する問題である。
世界の大きな流れの中で、いつまでも間違った歴史認識に拘泥し、いまでも「1965年の日韓請求権・経済協力協定により完全、かつ最終的に解決済みというのが、我が国の一貫した立場だ」(菅官房長官の10月19日の記者会見)と言い張る安倍政権は、今度こそ追いつめられるだろう。
この問題に限らない。
慰安婦問題がそうだ。
海上自衛隊の旭日旗問題もそうだ。
正しい歴史認識を持たない限り韓国との永続的、不可逆的良好関係は築けない。
いや、韓国だけではない。
中国がそうだ。
アジアがそうだ。
なによりも米国との関係がそうだ。
正しい歴史認識を持った政権が1日も早く日本に誕生しなければいけないのである(了)
Comment On Facebook