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長期化の様相を呈して来た米朝非核化交渉と出番のない日本

 注目されたポンぺオ米国務長官の訪朝と初の米朝非核化高官交渉は、どうやらこのまま一直線に、「北朝鮮の完全非核化と体制保証」の実現に突き進むわけにはいかない事を教えてくれた。

 ポンペオ国務長官は、「ほぼすべての重要な分野で進展があった」と強調してみせたが、そのポンぺオ国務長官が北朝鮮を離れた直後に、北朝鮮外務省は、要旨次のような米国を非難する談話を発表したという。

 すなわち、米国側の態度と立場は実に残念極まりない、非核化の意思が揺らぎかねない危険な局面だと。
 
 米朝首脳会談の精神に反して、CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)だ、申告だ、検証だ、などと一方的で強圧的な非核化要求だけを持ち出したと。

 朝鮮半島の平和体制構築の問題については一切言及せず、(朝鮮戦争の)終戦宣言問題は後回しにする立場を取ったと。
 
 我々はまだトランプ大統領に対する信頼心をそのまま維持している、しかし、双方の首脳級で合意した新しい方式から、実務家級に任せる古い方式に戻すならば歴史的なシンガポールでの首脳会談は無意味になると。

 物凄い非難だ。

 しかし、きわめて率直で筋の通っている非難だ。

 まさしくトランプ大統領に覚悟を迫っている。

 それにしても、ここまで北朝鮮が強硬姿勢を見せるとは驚きだ。

 果たして米朝非核化交渉は今後どのような展開を見せるのだろう。

 それはわからない。

 しかし、はっきりしている事が二つある。

 ひとつは金正恩委員長が強気に出られる背景には、二度目の中朝首脳会談によって確認された習近平中国主席の後ろ盾があるからだということだ。

 繰り返し私が書いてきたとおり、米朝首脳会談は事実上の米中首脳会談であったのであり、これからますますそうなっていく。

 二つ目は、米国の北朝鮮非核化交渉の決定はすべてトランプ大統領が決めるという事である。

 そしてトランプ大統領は後戻りはしないし、出来ないということだ。

 おりから米中貿易戦争が始まった。

 この米中貿易戦争は、そう簡単に終わりそうもない。

 そして貿易戦争は米中の軍事的対立と切り離す事は出来ない。

 つまり、北朝鮮の非核化交渉は、米中の覇権争いの主要テーマの一つとして展開していくのである。

 習近平主席とトランプ大統領のガチンコ勝負となる。

 板挟みになるのが米国との軍事同盟を優先してきた日本と韓国だ。

 しかし、韓国は南北融和、朝鮮民族統一という切り札がある。

 それに比べ、日本には、どこまでも米国の側に立つという対米従属しかない。

 それどころか、日本は、歴史認識問題という負の遺産を抱えている。

 そして何よりも安倍首相の間違った歴史認識は、中国や南北朝鮮はもとより、対米従属の米国でさえも受け入れられないものだ。

 北朝鮮非核化という歴史的な国際政治の舞台で、安倍首相の日本が出る幕は、これまでも、そしてこれからも、ない。

 それどころか、ポンぺオ国務長官との会談で、河野外相は、それ見たことかと、北朝鮮には圧力しかないと繰り返すだろう。

 ここまでくればもはや笑い話だ。

 北朝鮮非核化という歴史的な激動の時代に、安倍晋三という政治家を首相に持ってしまった日本は不幸というほかはない(了)

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