きょう発売の週刊ポスト(6月15日号)に、同じ改憲論者でも中曽根元首相と安倍首相では大きな違いがあると解説する特集記事が掲載されている。
すなわち、衆参三分の二を超える議席を持ついまこそ改憲だと思い込む安倍首相に対し、中曽根元首相は「時に非ず」と判断すれば、強引に押し切るような事はしなかったというわけだ。
私がその記事で注目したのは、引用されている中曽根元首相の自叙伝ともいうべき「自省録」の中の、次の言葉である。
「もう戦争はこりごりだという国民の思いに理解を持った人間でなければ、民衆の協力を得て、改憲などできるわけがありません」
この言葉は、かつて私がどこかで目にした、「大多数の国民が改憲に賛同するような状況にならない限り、強引に改憲をしようとすれば血なまぐさくなる」という中曽根元首相の言葉と表裏一体だ。
まさしく、戦後生まれの安倍首相が、自らの思い込みと政治的野心で強引の改憲しようとすることに対する痛烈な批判だ。
しかし、その中曽根元首相も、日米同盟重視ではまったく同じだ。
そして、物事がわかっているだけたちが悪い。
週刊ポストのその記事の中で、後房雄という名古屋大学大学院教授(政治学)がこうコメントしている。
「当時の政治状況は、日米同盟強化が重要課題で、米国が望んでいない改憲は事実上不可能だった」と。
中曽根元首相が総理になって真っ先に行ったのが、前任者である鈴木善幸元首相の「日米同盟には軍事的意味はない」という発言の軌道修正だった。
その発言が米国を怒らせ、責任を取って辞めざるを得なかった鈴木善幸氏の後を継いだ中曽根元首相は、「不沈空母」発言をして一気に日米軍事同盟へと舵を切った。
憲法9条に手をつけて護憲的な国民の反発を買うようなマネは愚の骨頂と言わんばかりに、改憲には手をつけず、事実上の改憲の道を拓いたのだ。
日米同盟最優先と言う意味では、中曽根元首相も安倍首相も同じであり、改憲に手をつけずに日米同盟を進めた中曽根元首相のほうが、改憲も日米同盟もと欲張って国民の反発を買う安倍首相よりはるかに賢明で悪質だと言える。
因みに、中曽根元首相と安倍首相の間で、国民的人気を得て長期政権を誇った小泉純一郎元首相もまた日米同盟最優先の首相であった。
しかし、小泉首相には外交・安保についての自らの政治信念は何もなく、ただひたすら日米同盟重視に走っただけだ 。
一番たちが悪く、危険な首相であったということだ。
長期政権を誇る三人の首相に共通する事は、憲法9条より日米同盟を優先する首相であるということだ。
その反対でなければいけない。
日米同盟よりも憲法9条を優先する首相が出て来なくてはけない。
そのためには、憲法9条こそ日本の国是とすべきだとはっきりと主張する政党、政治家が現れなくてはいけない。
それこそが新党憲法9条が目指すものである。
そして、その時は、今をおいて後にも先にもないのである。
日本の戦後の政治の正念場である(了)
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