3月末に電撃的に行われた金正恩の訪中は、はたしてどちらが希望したものなのか。
これを知る事は重要だ。
なぜならその事によって、中国と北朝鮮の力関係がわかるからだ。
しかしその事についてはっきりと書いたメディアはない。
そんな中で、きょう4月13日の産経新聞が貴重な情報を提供してくれた。
重村智計(しげむらとしみつ)早稲田大学名誉教授が書いていた。
重村氏と言えば、最近はあまりメディアに出て来なくなったが、ひところは頻繁にメディアに出て北朝鮮問題について解説していた毎日新聞の元ソウル特派員だ。
その重村氏が次のように書いていた。
実は中朝首脳会談において、報道も専門家も見落としている事があると。
それは中国外務省が発表した金正恩訪中に関する公文書の中に書かれていた金正恩の次の言葉であるという。
「朝鮮半島情勢は重要な変化も起きている。情義の上でも道義の上でも私は時を移さず、習近平総書記同志と対面して状況を報告すべきだった」と。
そして重村氏はこの金正恩の言葉を次のように解説している。
この発言は「これまで中国を訪問せず申し訳なかった」という金正恩の謝罪であると。
「情義」、「道義」という言葉に「義理と人情を忘れていた」とのおわびが込められていると。
「時を移さず状況を報告すべきだった」ということから、北朝鮮が南北会談と米朝会談を中国側に事前説明しなかった事実が読み取れると。
もしこの重村氏の解説が正しければ、今度の訪中で金正恩は習近平に頭を下げて米国との交渉を成功させて欲しいと頼みに行ったということだ。
ここまで頼って来る金正恩を習近平は守ると約束したという事だ。
中朝関係が悪化した最大の理由は、中国が張成沢(チャンソンテク)と通じて金正男を北朝鮮の指導者にしようとしたからだと言われていろ。
もしそうなら、それがバレタ中国としても困惑していたに違いない。
今度の金正恩の訪中でそれが完全に水に流されたということだ。
これで、5月末か6月かに行われる米朝首脳会談の行方は決まった。
つまり北朝鮮の非核化は習近平とトランプのディールによって決まるということだ。
いま水面下で米中協議が行われているに違いない。
だから米朝首脳会談の日取りが6月にずれ込む見通しになって来たのだ。
中国は北朝鮮の非核化について米国にコミットする。
その代りに金正恩の体制保証をトランプは習近平にコミットする。
それが具体的にどのような合意になるかわからないが、極端に言えば中朝関係が文字通り軍事同盟に発展すれば、中国との核戦争を出来ない米国は北朝鮮を攻撃出来なくなり、その場合は北朝鮮は文字通り核を捨ててもいい事になる。なぜなら中国によって体制保証と安全保障が約束される事になるからだ。
朝鮮戦争は終わり、南北朝鮮は、どのような形にせよ共存せざるを得なくなる。
米中でアジアを支配する事になる。
もちろん経済的利益も米中で二分する。
習近平にとってこれ以上ない外交的勝利だ。
頭をさげて近寄って来た金正恩はいまや習近平にとってこれほど可愛い奴はないという事になる。
そう考えた時、なぜあそこまで習近平が手厚く金正恩をもてなしたかがわかる。
歓迎宴で振る舞った一本2千万円のマオタイ酒も、習近平にとっては安いものだと合点が行く(了)
Comment On Facebook