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電撃的な金正恩の訪中が教えてくれる首脳外交の醍醐味

 誰もが予想しなかった金正恩の電撃的な訪中だ。

 一体、その背景には何があったのか。

 メディアに流される解説はこうだ。

 すなわち米朝首脳会談が不調に終われば米国の北朝鮮攻撃が一気に高まる。

 その時に備えて金正恩は中国との関係改善を図り、中国を味方につけるためだ、と。

 つまり米朝首脳会談を有利に運ぶための保険であり、米国けん制のための訪中であるというわけだ。

 もっともらしい解説だ。

 しかし、この見方は、あくまでも北朝鮮の融和外交が見せかけであり、非核化をめぐる米朝首脳会談が失敗することを前提にしたものだ。

 私のように、金正恩は本気で非核化に舵を切ったと見る立場からすれば、まったく違った光景が見えてくる。

 私は、今度の電撃的な金正恩の訪中は、文在寅大統領が口に出した、「米朝首脳会談は米朝韓三か国首脳会談となることもあり得る」という発言によって急きょ実現したものであると考える。

 習近平が金正恩を呼びつけたのか、あるいは金正恩が習近平に仁義を切ったのか、いずれにしても二人は、米朝首脳会談の前に、どうしても会う必要があったのだ。

 つまり、中国にとってはこれ以上中国抜きで南北融和や朝鮮半島の非核化について米国と韓国の仲介で合意されてはたまらない。

 その前にどうしても金正恩と会って中国の立場を伝えなければいけないのだ。

 金正恩もまた、中国との関係をこれ以上悪化させるのは得策ではない。

 もし米国との首脳会談で非核化どころか朝鮮戦争の終結にまで発展させるつもりなら、その前に、朝鮮戦争の同志である中国に、自らの決意を話して理解を得ておく必要があるのだ。

 はたしてどちらの見方が正しいのか。

 それはわからない。

 しかし、どっちに転んでもはっきりしていることは、韓国、北朝鮮、米国、中国の首脳が、文字通り国運を賭けた外交をみずから懸命に行っているということだ。

 これこそが首脳外交の真骨頂であり醍醐味だ。

 しかも、戦後の北東アジアの安全保障体制を根本的に変える歴史的外交を首脳自らが行おうとしている。

 外交に携わってきた一人として、これ以上興奮する光景はない。

 しかし、その首脳外交には北東アジアのもう一人の首脳の姿が見えない。

 その通りだ。

 日本の首相である安倍首相は、いま自ら招いた疑惑の追及から逃れる事に精一杯で外交どころではない。

 そして、やっている外交といえば、日本の国運とは無関係の、自分の支持率を上げる為のパフォーマンス外交である。

 いまはもっぱら疑惑追及逃れの逃避外交になり下がっている。

 このまま安倍首相が日本の首相である限り、日本はますます激動する国際政治の波に翻弄され、日本丸は沈没する。

 森友文書改ざん疑惑をごまかすことは出来ても、国際政治の荒波はもはや安倍首相では乗り切れない。

 一刻も早い安倍首相の辞任が日本と日本国民のためである(了)

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