北朝鮮のミサイル発射から一夜明け、きょうの各紙をみると、あらためて北朝鮮の瀬戸際外交の、その瀬戸際ぶりに驚かされる。
何しろ、すべてを敵に回す暴挙のごとくだからだ。
何といってもそのタイミングである。
南北融和を唱える文在寅韓国新大統領の就任直後だ。
習近平中国国家主席の晴れの舞台である一帯一路の開会真っ最中だ。
しかも北朝鮮はその会議に招待され出席までしている。
そして、トランプ大統領の米国が米朝対話を模索し始めた矢先だ。
メディアは一斉に、これら首脳の面目を潰したと書いている。
その通りだ。
しかもミサイル実験を隠そうとしなかった。
ここまでやりたい放題されたら韓国も中国も米国も激怒していいはずだ。
しかし、顔に泥を塗られたにしては、文在寅大統領も習近平主席もトランプ大統領も激怒している風情ではない。
怒りはこれから爆発するのか。
果たしてこれから北朝鮮状況はどう展開していくのか。
こればかりは私も分からない。
しかしはっきりしている事がある。
それは、北朝鮮はもとより、韓国も中国も米国も、そしてロシアでさえも、自らの国益を実現するという目標に向かってそれぞれのカードを持って、この一大外交ゲームに参加しているということだ。
北朝鮮は文字通り金正恩体制の生き残りかけて引き下がる事の出来ない瀬戸際外交を高めている。
たったいま北朝鮮はミサイル発射の成功を発表したというニュースが流された。
攻撃されればやり返す。その能力を持っている。そうなれば皆が破滅する。もはや核保有国の北朝鮮を認めるしかない、そうメッセージを送り続けているのだ。
韓国は民族統一という他の国にはない悲願がある。
何といっても北朝鮮問題のもう一人の主役は韓国なのである。
中国は北朝鮮とともに米国と朝鮮戦争を戦った血の同盟国だ。
米国と世界を二分すると言い出すまでに増長した中国は北朝鮮にとってみれば裏切りだ。
いち早く核兵器を保有し、どんどんと軍拡を進める中国が北朝鮮に対してどの面さげて核兵器を放棄しろと言えるのか。
そう北朝鮮に痛罵され、返す言葉はない。
しかも今の北朝鮮は中国との戦いすらおそれないだろう。
中国は何があっても話し合いで解決したいはずだ。
そして米国だ。
なにしろ北朝鮮のすべての目的は米国によって体制を保証してもらう事だ。
米国がそれに応じれば北朝鮮問題はあっという間に解決する。
その米国はいまトランプ大統領の米国だ。
トランプ大統領の一存ですべてが決まる。
そしてトランプが最優先するのは米国経済の為になる事だ。
米朝対話に豹変することは十分ありうる。
プーチンのロシアはいまや北朝鮮の唯一の支援国だ。
それを誇示する事によってここぞとばかりに北朝鮮危機を自国のために最大限利用しようとするだろう。
すべてが北朝鮮の仕掛けた瀬戸際外交にそれぞれのカードと思惑を持って参加しようとしている。
そんな中で安倍首相の日本は何もない。
ひとり外交ゲームの埒外にある。
一番怒って、圧力をかけろと叫んでいるごとくだ。
場違いも甚だしい。
今度の北朝鮮危機ではっきりしたことは、北朝鮮が核とミサイルを保有した国になった時点で戦争は出来なくなったということだ。
北朝鮮がどんなに許しがたい国であるとしても、共存するしかない。
それこそが憲法9条の精神が世界に求めるものだ。
その憲法9条を否定して、蚊帳の外から、ひとり北朝鮮に圧力をかけろと叫び続ける安倍首相は、そのうちお前は黙って引っ込んでいろ、と言われるのがオチだ。
北朝鮮の危機に、もっとも重要な役割を果たせるはずの憲法9条を持つ日本が、間違った歴史認識と、憲法9条否定で、もっとも役に立たない立場に追いやられている。
これほどの外交失態はない。
誰かがその事実を大声で叫ばなければいけない(了)
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