きょう7月1日、香港国家安全法が成立し、1国2制度が形骸化されるという非難一色だ。
しかし、中国は1国2制度を堅持すると言っている。
そう言った上で、香港問題は中国の内政問題であり外国の干渉は許さないと言っている。
どちらが正しいのか。
その答えのカギは、1997年の香港の中国への返還合意の経緯にある。
そもそも香港は、アヘン戦争を仕掛けた英国が中国から奪って植民地にした領域だ。
植民地主義が否定された戦後の国際社会で、中国が英国に返還を迫り、なぜ返還しなければいけないのかと渋っていたサッチャー首相も、最後は鄧小平の要求の前に譲歩せざるを得なかった。
その時の置き土産が一国二制度なのだ。
つまり、返還後も50年間は英国の統治下で認められていた自由を認めるという条件で返還に応じたのだ。
さすがに50年もたてば中国も民主国家になっているだろうという読みがあったのだろう。
ところが、いまや中国は、当時の予想をはるかに上回るスピードで経済大国になったが、同時に西側先進国(旧宗主国)たちが思い描いた自由で民主的な国家にはならなかった。
英国統治下の自由と民主主義で育った若い香港市民もまた、共産国家中国の締め付けを嫌って自主、自立の要求を高め行った。
そのような香港問題について、中国と欧米に支援された香港民主派の対立を解消する名案はない。
しかし、このままでは中国の言い分が通ることになるだろう。
香港が中国に返還された以上、他国が中国政府に干渉は出来ないからだ。
そこを見事についたのが、香港国家安全法だ。
その中で、外国勢力と協力して香港の治安を損なう者を罰するとした。
だから、米国の支援を受けていることを公言して来た香港の民主化運動家たちは解散せざるを得なくなったのだ。
世界で一番内政干渉して他国の政権を転覆させて米国は、これ以上強く出られなくなる。
しかもその米国は、いま黒人差別問題で建国以来の分裂状態になっている。
そしてそれが欧州に広がっている。
重要なところは、反差別運動が、差別政策の元凶である植民地主義の否定に発展しつつあることだ。
ついにベルギーのフィリップ国王がコンゴ民主共和国の植民地支配について、王室としてはじめて「深い謝罪」を表見したという(7月1日毎日)
この動きを危惧しているのがきょう7月1日の産経新聞だ。
すなわち、黒瀬悦成ワシントン支局長がこう書いている。
これまでの歴史が、黒人など抑圧された側からの歴史によって修正されようとしていると。
そして、その思想や風潮は時間を置いて日本にも入ってくると懸念しているのだ。
右翼の歴史修正主義者たちが、今の動きは左翼の歴史修正主義者の動きだ、と恐れているのである。
米国に始まり、いまや世界に広がりつつある反植民地主義の動きは、これからもっと広がっていくだろう。
その流れを中国が見逃すはずがない。
香港の1国2制度を要求する欧米諸国に対して、それは植民地政策の残滓であると言い出すだろう。
同じⅠ国2制度でも、侵略者が押しつける一国2制度ではなく、主権を回復した中国が自ら導入するⅠ国2制度を導入して何が悪いと。
そういって、これまで以上に香港の自由化を認めるようなら面白いのだが、残念ながらそこまでの知恵と余裕は習近平の中国にもないだろう。
香港を巡る中国と旧宗主国の対立はどっちもどっちだ。
日本はどちらか一方に与することなく、反植民地主義を貫けばいいのだ。
ところが安倍政権の日本は、間違った歴史認識を持っているがゆえに反植民地主義すら取れない。
香港問題もまた、安倍政権にとって動きの取れない問題なのである(了)
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