ペシャワール会がきのう2月15日、福岡の事務所で記者会見を開き、中村さんが生前取り組んできた事業について、現地スタッフと継続することで合意したことを明らかにしたという。
一段の小さな記事がそう報じていた。
ペシャワール会のその気持ちはわかる。
そして今のペシャワール会としてはそうするしかないだろう。
しかし、中村さんの遺志を本当に引き継ぐつもりなら、後は日本政府に中村さんがやろうとしていた事をやらせるべきなのだ。
まさしくそれがJICAの本来の仕事なのだ。
私がそう主張する大きな理由は以下の通りである。
まず、中村さんは十分に立派な仕事をなし遂げた。
その事業をペシャワール会がさらに発展させようとしても、中村さんなしでは無理だ。
そして、それは中村さんの本意でもない。
それを一番よく知っているのはペシャワール会のはずだ。
ここまで立派に灌漑事業を定着させ、そしてなによりも現地人をそこまでやる気にさせた。
これこそが中村さんの功績であり、それを必ず発展、拡大させていかなければいけない。
それはもはやボイランティアの領域を超えた大事業だ。
つまり日本政府がすべき仕事なのだ。
JICAすなわち国際協力機構は、いまでこそ、その理事長が親米保守の御用学者の天下りポストとなり、日本の戦略的援助機関に成り下がってしまったようだが、その前身はおなじJICAでも技術協力の実施機関であり、開発途上国の一次産業育成支援機関だった国際協力事業団だった。
まさしくアフガンの灌漑事業支援にぴったりの援助機関だったのだ。
私はそのようなJICAの初期から担当して来たからよく知っている。
JICAを本来の技術協力支援の精神に立ち返らせるためにも。中村さんの仕事をJICAに引き継がせるべきなのだ。
日本政府に引き継がせるべきもうひとつの理由はアフガンの治安情勢の悪さだ。
なぜ中村さんは殺されなければならなかったのか。
援助を再開する大前提はその究明にもかかわらず、今日に至るまで、誰もその理由を明らかにできないままだ。
そんな中で唯一人、その原因を週刊誌で語っていた人がいた。
アフガニスタンなどで軍閥・武装勢力の武装解除を指揮した経験を持つ伊勢崎賢治氏だ。
中村さんはアフガン政府から表彰されて灌漑事情を行っていた。つまり中村さんがアフガン政府の為に灌漑事業をやっていたと映ったからこそ、アフガン政府から排除されたアフガン人にとっては敵に見えたのかもしれないと。
もし、そうであるなら、そして私は伊勢崎さんの見方は正しいという気がするのだが、もはやペシャワール会で引き継ぐのはあまりにも危険だ。
安倍首相は、遅ればせながら中村さんを表彰した。
そして家族はその表彰を受け入れた。
つまり、中村さんは何が何でも政府の支援を受けないというような頑なな人ではないのだ。
存命だったら、目的の実現のためなら、たとえ安倍政権からの支援であっても受け入れるに違いない。
そして、安倍政権はペシャワール会から頼まれれば断れるはずがない。
中村さんの遺志は安倍首相に引き継がせるのだ。
おりから米国はタリバンと和平協議を直接交渉して治安回復を実現するようになった。
これは今のアフガン政府には統治者能力がないと認めているようなものだ。
反政府組織を相手にして、彼らの要求に耳を傾けるしか和平は実現できなくなったということだ。
中村さんがアフガンの大地を潤した水は、日本政府の手でアフガンの人たち全てを潤すようにしてこそ、中村さんの遺志を引き継ぐことになる。
いまこそJICAにそれをさせるべきだ。
初期の頃とは違って、いまのJICAには権限も資金力も大きなものがある。
理事長は反対しても、JICAの職員は、中村さんの遺志を引き継ぐことを大歓迎するに違いない(了)
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