日本政府の対韓強硬姿勢は、韓国が軍事情報保護協定を破棄した時点で更に激しく硬化した。
なぜか。
まさかそこまではやらないだろうと高をくくっていたからだ。
なぜ高をくくっていたか。
韓国といえども米国を怒らせることはしないだろうと思い込んでいたからだ。
ところが韓国は協定を破棄した。
破棄したどころか、米国が不満を漏らしても、その不満に不満を漏らすほど、文在寅政権は強気を崩さない。
安倍首相はこれに衝撃を受けたのだ。
自分には決して出来ない事を文在寅大統領はやってのけた。
対米自立で先を越されたと。
だから頼み込んで米国に更なる不満を表明してもらったのだ。
それがエスパー国防長官や国務省高官の発言だ。
そして、安倍首相に忖度する日本のメディアは、あたかも米国が韓国に怒り出したと言わんばかりの報道だが決してそうではない。
米国は韓国だけに文句を言っているのではない。
日韓の間で早く解決しろと言っているだけだ。
このような日韓関係の現状について、作家でジャーナリストの肩書を持つ冷泉彰彦(あきひこ)という人が、きょう8月31日の朝日新聞オピニオン欄の「耕論」で、次のように語っている。
「1993年から米国に住み、国際情勢を観察し続けていますが、日韓の対立については、ほとんど報道がありません」
と。
「米国務省、米国防総省の専門家は韓国への懸念を表明したもかもしれませんが、トランプ米大統領はさほど関心をはらっていません」と。
「究極の自国第一主義のトランプ氏は、北朝鮮がいくらミサイル発射をくり返しても、自分の国に届かない射程の短距離ならば問題ないと明言してしまっています・・・トランプ氏はもともと安全保障よりも金銭に換算できる交渉を、それも多国間ではなく、一対一でやることが得意と思い込んでいます。ですから、日本と韓国が熱くなっているのは、日本と韓国それぞれからより有利な条件を引き出す好機とすら、思っているかもしれません・・・」と。
米国に住んでいるからこそ言える的確な指摘だ。
その冷泉氏は次のように締めくくっている。
「いまや米中貿易摩擦や世界的な株安を前に・・・各国が手を結ばなければならない時です。世界市場に工業製品を輸出する事で国が成り立っている日韓関係がなぜ反目し合っているのか、と世界は冷ややかに見ています。両国のメディアや世論さえその気になれば、まだまだ自主的な解決が可能だと考えています」
前段はその通りだろう。
しかし後段はポジショントーク、つまり安倍政権やメディア、さらには反安倍の読者をも意識した格好づけだ。
そうでも言わないと朝日新聞が掲載しずらくなるからだ。
本当のところはこうである。
日韓関係のここまでの悪化の原因は日韓両首脳の歴史認識の違いにある。そして日韓両首脳の歴史認識の違いについて世界はほとんど知らない。もしこのまま歴史認識のぶつかり合いが続き、日本の軍国主義が犯した植民地支配に争点が及ぶようになれば、安倍首相に勝ち目はない。そうならない前に安倍首相は文在寅大統領と政治決着すべきだと。
私だったらそうしめくくる。
しかし、それでは朝日に取り上げられない。
朝日を含めたいまのメディアが安倍忖度を続ける限り、世論は目覚めない。
「両国のメディアや世論さえその気になれば、まだまだ自主的な解決が可能だ」というのは、正しくないと思う(了)
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