新年の各紙の社説の中で、私が最も注目したのは、きのう1月3日の毎日新聞の「象徴の意義を確かめ合う」という社説だ。
その社説は、一言で言えば、われわれが天皇制を是として維持していくなら、象徴天皇の意義について新天皇と共同作業で作り上げていかねばならないという問題提起だ。
この社説で注目すべき点はいくつかある。
まず、「そもそも憲法が定める国民統合の象徴とは抽象的な概念で、明確な定義はない」と率直に認めているところだ。
我々は定義のない概念の下で70年余りも憲法を護持して来たのだ。
このまま放置されていいはずはない。
次にこう書かれているところだ。
「陛下を支えて来られた皇后さまが即位20年の記者会見で『象徴の意味は今も言葉には表しがたい』と述べたことは今なお重い」と。
驚いた。
10年も前に皇后さまは問題提起されていたのだ。
天皇陛下の2016年8月8日のあの「おことば」は、まさしく皇后陛下と共有された「おことば」だったのだ。
そして、天皇制と民主主義の併存について触れているところだ。
毎日のこの社説は次のように書いている。
「戦後しばらくは、民主主義と天皇制と供存について疑問視する声が相当程度あった」と。
今でも疑問視する国民は、共産党に限らず、厳然として存在することを私は知っている。
だからこそ、平成天皇は、「国民主権の憲法を重んじて行動し、天皇と国民の関係に、戦前の暗い記憶が影響を与える事のないよう努めた」(毎日社説)のだ。
しかし、その毎日新聞の社説でさえ、象徴天皇の在るべき姿について明示していない。
「新天皇との共同作業で作り上げていくものであろう」としか書いていない。
これでは天皇陛下の「おことば」が泣く。
なんのために天皇陛下は批判を覚悟であの「おことば」を発せられたというのか。
毎日新聞は、はっきり書くべきだ。
新天皇にその作業を委ねることなく、今上天皇は自分の在位の間中、全身全霊で答えを示されて来たと。
そして2年前のあの「おことば」で、それでよかったか、国民はどう思うかと、問われたのだと。
だから国民は4月末までの間に答えを出さなければいけないと。
そうしないまま平成を終わらせるわけにはいかないと。
そう毎日新聞は書くべきだ。
そして、国民の意思を示すのは国会議員であり、その集まりである政党であるから、毎日新聞は、4月末までに各党に質問すべきだ。
今上天皇の問いかけにどう答えるかと。
憲法9条をこの国の最高の政治的方針(国是)と答える政党が出て来ないまま新天皇の時代を迎えるわけにはいかないのである(了)
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