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三木武夫元首相が保管していた北方領土交渉に関する極秘文書

  きのう5月19日、茂木外相は持ち回り閣議で2020版外交青書を報告し、その内容がきょうの各紙で取り上げられた。

 私が注目したのは北方領土問題に関する記述のところだ。

 2018年版までは北方4島は日本に帰属すると書かれていた。

 ところが2019年版ではその部分が削除された。

 当時は北方領土問題についての歴史的合意に向けた交渉が佳境に入っていた時であり、いたずらにロシア側を刺激してはいけないという配慮があったと報じられていた。

 ところが、きのう報告された2020年版外交青書では、北方領土に関しては、「わが国が主権を主張する島々」と、再び領有権に言及したという。

 分かりやすい外交青書の書きぶりだ。

 もはや北方領土交渉は完全に行き詰まった。

 さすがの安倍首相もあきらめたのだ。

 どうせ一島すら返ってこないのだから、原則論を貫くしかないというわけだ。

 この外交青書の記事を見て私の頭をよぎったのは、2月17日の朝日のスクープ記事だ。

 その事を私は2月17日付のメルマガ第107号で書いた。

 つまり、1956年の日ソ共同宣言交渉に関する極秘文書を三木武夫元首相が保管している事がわかったというのだ。

 そして、その文書によれば、当時の交渉担当者である河野一郎が、歯舞、色丹だけでなく、国後、択捉の領有権も明記したいと主張したらロシアは物凄い勢いで一蹴したというのいだ。

 おそれをなした河野一郎は、国後、択捉の要求をあきらめたというのだ。

 こんな衝撃的な事が書かれている極秘文書を三木武夫元首相が保管していたというのだ。

 これは物凄いスクープだ。

 だからこそ外務省はその存在を否定しているのだ。

 これを要するに、日本は1956年の時点で、もはや4島一括返還は無理だとわかっていたのだ。

 それにもかかわらず、日本国民にたいしてはあくまでも4島は日本の固有の領土だと言い、4島一括返還こそ日本の方針だと言い続けて来たのだ。

 それでは、あの時、国後、択捉をあきらめて、最初から歯舞、色丹の2島返還の実現だけでいいから返還してくれと要求していたらどうだったか。

 ロシアとの関係では、返還は可能だったかもしれない。

 しかし、米国がそれを許さなかったのである。

 いわゆるダレスの恫喝である。

 つまり米国は、日本とソ連を離反させるために、たとえ2島でも返還は認めなかった。

 日ソ間で合意しようとしても、アメリカはサンフランシスコ講和条約違反だと言って認めなかったのだ。

 2島返還で合意すれば米国は沖縄を日本に返さない、そう日本を脅かしたのだ。

 北方領土問題の解決を不可能にしているのはロシア(ソ連)ではない。

 米国なのだ。

 この不都合な事実を国民から隠すために、日本は北方領土4島一括返還にこだわり続けて来たのではなかったのか。

 その疑惑を検証するためにも、1956年の日ソ共同宣言の交渉過程を記した三木武夫元首相の保管する極秘文書の公開は不可欠だ。

 私は2月17日の朝日のスクープ記事を見てそう書いた。

 しかし、今日まで、三木武夫元首相保管の極秘文書の公開を求めた政治家もメディも、ただの一人も出て来なかった。

 2020年版外交青書が公表された今、あらためて三木武夫元首相の保管する北方領土交渉に関する極秘文書の重要性が浮かび上がってくる(了)

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