きょう5月5日の産経新聞が、連載特集記事「戦後75年第一部憲法改正④」で、憲法改正が出来なかった自民党の「長い不作為の歴史」について批判的に書いている。
その要旨はこうだ。
「憲法改正に向けた国民的な議論を深めよう」
そう首相自ら国会で言い出した安倍首相は、自民党の立党直後に首相になった鳩山一郎以来初めての首相である。
しかし、鳩山一郎はもとより、それ以降のどの自民党総裁も改憲に手をつけることは出来なかった。
あの中曽根首相ですら、とても憲法までは手が回らなかった、やむを得なかったとはいえ、ここは私も反省していると、引退後に白状している。
今度こそ安倍首相には結党以来の自民党党是を実現してもらいたい。
そう言わんばかりの記事だ。
しかしこの産経新聞の記事は、肝心な事に触れていない。
「憲法までは手が回らなかった」のは中曽根首相だけではない。
鳩山一郎首相を含め、あらゆる首相はその在任中には、もっと重要で急がれる政治課題があったのだ。
だからできなかったのだ。
そして、いままさに安倍首相もそのジレンマに立ち往生しているのだ。
そしてそれを産経新聞すら認めている。
コロナもあれば東京五輪もある。
何よりも、コロナ後の国民経済の立て直しが最優先され、そのための財源をどうするかという大問題があるのだ。
そして産経新聞のその記事は、安倍首相は5月3日の改憲派集会のビデオメッセージで、「必ずや皆さんと共に成し遂げて行く、その決意に揺らぎはない」と訴えたが、実現の見通しは立っていないと書いている。
安倍改憲はもはや無理だと認めているのだ。
極めつけはその記事の締めくくりの言葉だ。
こう書いている。
「安倍が去った後、『冬の時代』が再び自民党を包み込む可能性は否定できない」と。
産経新聞も分かっているのだ。
安倍首相ですら憲法改正は出来ないまま終わる。
安倍首相ですら出来ない憲法改正だから後に続く誰も出来ないとあきらめ顔だ。
私の書いて来た通りだ。
安倍首相の改憲を阻止しさえすれば、近い将来、改憲問題が日本の政治で論じられる時は来ない。
つまり改憲論議は日本の政治から消えるのだ。
その代りに日米同盟がどんどんと進む。
そして日米同盟がどんどん進むことについて、日本の政治は与党も野党も、誰も止められない。
それこそが大問題なのである(了)
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