一夜明けて日米貿易協定の合意に至る解説記事を読み比べ、つくづく思った。
日米貿易協定は令和の日米安保条約であると。
合意に至るまでのプロセスが何もわからないまま署名させらた。
そしてその内容は明らかに不平等だ。
それでも初めに合意ありきだった。決裂は許されなかったのだ。
こう考えた時、まさしく日米貿易協定はあの日米安保条約とそっくりであることがわかる。
実際のところ、日本が米国と初めて締結する二国間自由貿易協定だ。
そして、トランプにとっても、議会の承認を得る必要がないという意味で、北米(メキシコ・カナダ)や韓国との自由貿易協定に先行する、はじめての、選挙民向けに自慢できる、自由貿易協定になる。
中国との貿易交渉がうまくいかない中で、対照的な勝利だ。
文字通りトランプにとってのウィンだ。
それでは、日本にとってのウィンは何か。
日本経済の根幹は農業と自動車である。
そして農業の中心は米(コメ)だ。
農家の票を失いたくないから、いかなる政権も米作だけは最後まで守ろうとする。
ところが、米国米の主要生産地はカリフォルニア州であり、トランプの関心は米作にはなかった。
トランプの関心は米国牛の日本への輸出だ。
米国牛で譲歩することは、米に比べればたやすい。
譲歩ははやばやと決まってた。
それに比べ自動車・自動車部品の追加関税・数量規制は打撃が大きい。
これさえ回避できれば安倍首相のいうところの日本側のウィンだ。
しかし、これが難航した。
日米貿易協定の本文の中でそれを書き込むことはもちろん米国は応じない。
交渉が長引いた最大の理由はそこにあった。
しかしトランプ大統領は早く貿易協定をまとめて成果を選挙民に示したい。
日本側もトランプの要求がもっと激しくならないうちにまとめたい。
そこで両者の利害が一致したのが「交渉継続」という現状維持だ。
関税を下げさせられなかっのだからウィンではない。
それではあまりにも成果がないということで、追加関税や数量規制は行わないという確認事項を共同声明に明記し、それを仰々しく署名した。
最悪の事態を回避しただけなのに、あたかも成果の如く宣伝した。
しかもそれは気休めだ。
同床異夢だ。
トランプは、対日赤字や国内産業保護を理由に、いつでも追加関税や数量規制を持ち出すことができる。
しかし、少なくとも貿易協定の合意した時点では最悪の事態は回避できた。
それが日本側のウィンであり、それで大成功なのだ。
きょうの朝日によると、正式な日米貿易協定は10月上旬に署名されるという。
その後に国会に提出されるのだ。
その時点ではじめて日米貿易協定の全貌が明らかになる。
野党はどこがウィン・ウィンなのか、譲歩し過ぎだ、と追及すると報じられている。
しかし、安倍政権は聞く耳を持たない。
トランプの都合に合わせて、来年1月1日に発効させなくてはいけないから12月までに国会承認を行うつもりだ。
野党もメディアもそれを知っている。
そして、どんなに不都合な日米貿易協定であっても、それを反故にすることは野党には出来ない。
だから野党は本気で反対する気はない。
日米関係をぶち壊すようでは政権は取れないからだ。
またひとつ、日米貿易協定という不平等な、そして日米経済関係を左右する条約が日米間に成立したということである(了)
Comment On Facebook