梯子を外された安倍首相の必死の働きかけが奏功したかどうかはわからないが、ここにきて米朝首脳会談の行方について、慎重論、警戒論が目立つようになってきた。
金正恩の満額回答は、それを行動で示さない限り、空手形に終わる、これまでのように騙される、トランプは、そうはさせない、そういう記事が目立つようになってきた。
そして、ホワイトハウスの報道官もそう語りはじめた。
しかし、もしここで米国がゼロ回答を維持すれば、トランプに残された選択は北朝鮮攻撃しかない。
その事を、ビクター・チャ氏が9日のニューヨーク・タイムズ紙(電子版)に寄稿して警鐘を鳴らしている(3月11日産経)。
「首脳級の交渉が失敗すれば、他に外交手段はなくなる」と。
「失敗すれば両国を戦争の瀬戸際に押しやる可能性がある」と。
ビクター・チャ氏はブッシュ政権下で6カ国協議の次席代表を務めた朝鮮半島問題の専門家だ。
トランプ政権が一時、駐韓大使の指名を検討していたが、トランプ大統領と意見が異なったため撤回したと報じられた人物だ。
その人物の言葉は思い。
絶対に米朝合意は実現させなければいけないのだ。
その為に南北民族が一体となって米朝合意の主導権を取らなければいけない。
ところが、トランプ大統領は再選の為に北朝鮮を攻撃するかもしれないというとんでもない記事を書いた記者がいる。
きょう3月11日の日経新聞の吉野直也政治部次長の「風見鶏」がそれだ。
彼によれば、トランプ大統領はすべて大統領再選のカレンダーで動く。
当面は、苦しい情勢にある11月の中間選挙だ。
北朝鮮に核放棄をさせられれば、これまでの、どの米国大統領も出来なかった快挙だ。
それだけで中間選挙挙に勝てる。
だからトランプ大統領は北朝鮮に強く出るのだ。
そして成果が出なければ、それはそれでいい。
成果が得られなければ北朝鮮を攻撃すればいいのだ。
湾岸戦争に踏み切ったブッシュ(父)大統領も、アフガン、イラクを攻撃したブッシュ(子)大統領も、支持率は一時90%まで跳ね上がった。
もし交渉が中間選挙までにうまく行きそうもなく、中間選挙に負けでもしたら大統領再選が危うくなる。
そうなれば、ますます北朝鮮攻撃の誘惑に駆らる。
「歴史的な(米朝首脳の)直接会談は軍事的な緊張となお隣合わせである」
そう吉野氏はその記事を締めくくっている。
とんでもない記事だ。
政治記者だからだといって、そんな政治解説をしている場合ではないのだ。
政治記者だからこそ、何があってもトランプ大統領に北朝鮮を攻撃させてはいけないと言わなければいけないのだ。
吉野氏の記事のとんでもないところは、政治カレンダー重視は安倍首相の総裁3選についても同じだ書いているところである。
すなわち、今年9月の総裁選で3選を手にした勢いで安倍首相は改憲の発議を今年中に行う。
19年には天皇退位が控えており、20年は東京五輪だ。
それを終えて21年に総裁と衆院議員の任期満了を迎える。
これが安倍首相の政治カレンダーであると書いている。
これは、その政治カレンダーを狂わせないためには安倍首相は何でもやると言っているようなものだ。
おりから森友疑惑で支持率が下がり、安倍3選が危うくなること必至だ。
安倍3選のカレンダーを狂わせないために、トランプの北朝鮮攻撃は好都合だと安倍首相が考えているとしたらどうか。
その為に北朝鮮に圧力をかけて米朝合意を潰そうとしいるとしたらどうか。
自らの再選や3選のめに戦争さえも利用する。
あってはならないことだ。
トランプ大統領には何があっても北朝鮮を攻撃させてはならない。
トランプ大統領に北朝鮮を攻撃させないためにも、安倍3選は何としてで阻止しなければいけない。
野党はそこまで踏み込むべきだ。
そこまで踏み込まないと政局の大義はなく、国民は安倍打倒の本当の意義に気づかない。
野党もまた正念場である(了)
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