2018年6月にシンガポールで歴史的な米朝首脳会談が行われた時、私はこう書いた。
トランプ大統領はこの会談を決裂させるわけにはいかない。
決裂させれば、あとは武力行使しか選択肢はなくなるが、核を持った北朝鮮に武力行使すれば犠牲があまりにも大きく、そんなことはトランプ大統領といえども出来ないと。
だからといって、米朝合意が不成立に終われば、北朝鮮は大手を振ってどんどんと核兵器を開発するから、北朝鮮が文字通り核保有国になることを指をくわえて眺めるようなものだ。
それは米国にとって最悪のシナリオだと。
だから、「完全かつ不可逆的な検証可能な核放棄」などという、北朝鮮が飲めない要求にこだわるのではなく、ここはひとつ、非核化要求という鞭と、その見返りに北朝鮮の経済開発を支援するという飴の二つを巧みに使って、北朝鮮の段階的非核化で合意するしかない。
そう合意してノーベル平和賞をもらえばいいのだ。
そう私は当時、書いた。
しかし、ウクライナ疑惑の追及が激しくなったことにうろたえたトランプ大統領は、弱みを見せるわけにはいかないと、強硬姿勢に終始して米朝首脳会談を決裂させた。
それから2年経ち、私の予言通り、まさしく最悪のシナリオが現実のものになった。
ここにきて北朝鮮が韓国に対し戦争も辞さないと言わんばかりの強硬姿勢に転じた。
あそこまで罵倒されたら私でも頭にくる。
しかし、北朝鮮が真っ先に強硬姿勢に転じたのは米国に対してだった。
交渉を決裂させたのは米国のほうだ、北朝鮮は譲歩したのに米国はゼロ回答だ。
これでは交渉は出来ない。
米国が交渉を進める気がないなら、こっちにも考えがある。
そういって北朝鮮は核兵器開発をどんどん進め、その成果を見せつけた。
これを要するに、北朝鮮が強気になったのは、ますます核保有国としての力をつけたからなのだ。
そう思っていたら、きょう6月19日の朝日新聞が書いた。
いまや北朝鮮は、非核化交渉ではなく、核軍縮交渉という新しい枠組みに持っていこうとしていると。
なるほど、核軍縮交渉になれば、核保有国が有利になることを我々は国際的な核軍縮会議を見てよく知っている。
ここまで北朝鮮を強硬にさせてしまったトランプ大統領の大失策である。
北朝鮮が核保有国になってしまった以上、安倍首相が打つ手はますますなくなる。
拉致問題の解決など、夢のまた夢だ。
米国も日本も韓国も、対北朝鮮政策を根本的に見直さざるを得ないということである(了)
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