きょうのニュースは、何と言っても河野外相がきのう突然発表した地上イージス配備の白紙撤回だ。
日本の安全保障に関する政策の中で、そしてその中でもとりわけ日米安保に関わる政策の中で、ここまで大きな計画変更を行う事を、私はこれまでの日本外交で見た事がない。
一体、この突然の計画変更の裏に何があったのか。
そして、このことが、日米関係に今後どのような影響を与えていくのか。
おそらく、これから徐々に明らかになっていくだろう。
その前に、例によってこのニュースの見どころについて思いつくままに列挙してみる。
まず、タイミングの異常さだ。
地上イージスは北朝鮮からのミサイル危機に備えるものだったはずだ。
米朝関係が決裂し、北朝鮮の脅威がますます高まる中で中止発表をした事は、それまでの説明が真っ赤なウソだったということだ。
さもなければこのタイミングで白紙撤回せざるを得ないよほどの理由があるということだ。
果たして白紙撤回に追い込まれた理由は何だったのか。
その理由を特定することは難しい。
なにしろこの地上ミサイル配備計画は、あらゆる意味で実現は無理だったからだ。
しかし、私はやはり河野防衛相がきのう発表した一番新しい理由がもっともに聞こえる。
つまりこの防衛相は、ブースターの落下を防ぐことは住民の安全確保の上で欠かせないが、その費用が膨大になる事がわかり、今の財政状況では到底無理なことが判明したという。
政治の基本は国民の命と生活を守る事であることは誰もが言うことだ。
国民はいまコロナ危機で経済的に生きていけなくなりつつある。
そんな時にこれ以上無駄な予算を米国に支払うなら、その瞬間に安倍政権は国民の怒りで追放される。
かといって、ブースターが住民の上に落下すればその瞬間に日米同盟は破綻する。
河野防衛相ならずとも白紙撤回せざるを得ないだろう。
この理由だけでも十分なくらいだ。
それでは、果たしてこの判断は、安倍政権内部でどのような議論がなされた上で、どのタイミングで決まったのか。
報道を見る限り、河野防衛相は12日に安倍首相に白紙撤回の意向を伝えているという。
おそらく安倍首相はその時知らされたのだろう。
しかし、コロナ対策や国会対策でまともに反応できずに聞き流したのだろう。
明確な指示を出せないまま、河野防衛相がきのう突然発表したのかもしれない。
実際のところ、外務省は寝耳に水だと驚き、日米関係に亀裂が入ると怒ってる。
防衛省内部ですら、いくらなんでも見直しはないだろうと驚きの衝撃が走ったという。
河野外相は、今後の対応は国家安全保障会議(NSC)で話し合われると言った。
これは、今度の発表が、自分と一握りの防衛官僚で先走ったということを認めているということではないのか。
もしそうなら、今度の発表はやはり先走ったということだ。
このタイミングで突然発表しなくてもよかった。
トランプ大統領が激怒し、親米優先の外務省と防衛官僚のタカ派が巻き返して、来るNSC会議では白紙撤回の発表が白紙撤回される可能性はまだあり得る。
そんな迷走をすれば、安倍政権はますます死に体になる。
こう考えていくと、河野防衛相のきのうの地上イージス白紙撤回の発表は、最大の政治問題を安倍首相に突きつけたことになる。
果たして野党はこの問題を正しく追及できるだろうか。
政局ばかりに明け暮れるのではなく、たまには日本の安全保障の根幹にかかわる大論争を、野党は国会で堂々としてみたらどうか。
河野防衛相が投げた絶好球を見事の打ち返したらどうか(了)
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