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電撃的な検察庁法改革案の見送りとそれでも続く安倍政権

 驚いた。

 安倍首相が週明け早々の月曜日に検察庁法改正案の見送りを発表した。

 それどころか、月曜日の朝に発表したのだ。

 読売新聞の記事は、観測気球の記事どころではなく、文字通り大スクープだったのだ。

 安倍首相がその日のうちに検察庁法改正案の見送りを発表した。

 それどころか、その日の朝に発表したのだ。

 安倍首相は週末に腹を固めていた。

 安倍首相の反撃どころか、完全な白旗である。

 ところがである。

 きょうの各紙を見て思った。

 白旗をあげた振りをして安倍首相はまだまだやる気だと。

 だからこそ、ここは世論に耳を傾ける謙虚さをことさらに見せたのだ。

 私がそう考える理由は次の通りだ。

 きょうの各紙は一斉に一面トップで大きく報じている。

 世論に屈して安倍首相は見送らざるを得なかったと。

 それはその通りだ。

 しかし、各紙の書きぶりは、その大きさに比べ、中身の緊迫感はまるでない。

 もし本当に安倍首相が世論に負けて断念したなら、すぐに政局につながってもおかしくない。

 しかし、きょうの各紙の書きぶりはその気配がまったくない。

 これを要するに、読売にスクープを出し抜かれた反動で、ことさら大げさに書いただけなのだ。

 なぜ安倍首相が、どことなく余裕があるように見えるのか。

 少なくとも次の事が今日の各紙から見て取れる。

 一つは、そもそも黒川氏の任期延長は安倍首相が言い出したのではなく、黒川氏を評価してきた菅官房長官が後押ししたものだったということだ。

 この事は、近く逮捕されることになるだろう河井前法相が菅官房長官の子分であり、菅官房長官の要望で入閣をごり押しした事とあわせ考えれば、今度の法案の強行成立は、安倍首相の責任というより、菅官房長官の失策だったということだ。

 責任をかぶった形になった安倍首相に、菅官房長官はますます頭が上がらなくなる。

 内部からの安倍降ろしは出てこないだろう。

 二つは、今度の断念が野党の手柄にならない事である。

 野党第一党である立憲民主党の枝野代表が記者会見で語ったらしい。

 「有権者が声を上げてくれた成果だ」と。

 「日本の民主主義にとって大きな前進だ」と。

 同じく立憲民主党の安住国対委員長が語ったらしい。

 「一人の声が政治を動かすと言いたい」と。

 「あなたの声が政治を動かすと言いたい」と。

 野党第一党の代表二人がこんな情けない事を言っている。

 自分たちが撤回させたとは言えない証拠だ。

 野党第一党がこれでは、とても野党は安倍首相を倒せない。

 三つ目は「世論が動かした」の虚実だ。

 確かに著名人がネット上で反対し、それに世論が勇気づけられたという面はあっただろう。

 しかし、もし世論がネットで政治を動かせるなら、これまでも、もっとトンもない安倍暴政があったはずだから、その時動かせたはずだ。

 百歩譲って、今度の成功例をきっかけにこれからどんどんと安倍暴政を阻止できるはずだ。

 しかし、私は何度もこの手は通用しないと思う。

 それどころか、再び同じような事は起こらないような気がする。

 何よりも、辺野古やオスプレイや在日米軍経費負担増反対といった日米同盟関係に関わる問題では、世論は絶対に動かないだろう。

 これを要するに、安倍首相は大きな譲歩を強いられたことは間違いないが、電撃的に見送り発表をした事によって、結果的に安倍首相は最善の形で、最大のピンチを切り抜けたということだ。

 少なくとも9月の臨時国会まで安倍首相は続く。

 そして臨時国会では、検察庁改正法案や黒川氏の事などもはや問題にならず、一気にポスト安倍の政局がらみの展開になる。

 それにしても、世論と並んで検察OBの反対が安倍首相の断念につながったとメディアが書いているのは笑わせる。

 彼らが一度でも権力犯罪を阻止した事があると言うのか。

 適当にお茶を濁して天下りしたり、企業犯罪の守り役として弁護士に転じたようなものばかりが目立つ。

 今頃になって検察の独立性や正義を振りかざすとは厚顔ぶりも甚だし。

 こんな検察官僚の人事を彼らに任せておけばろくなことにならない。

 政治が官僚をコントロールする必要性は、今度の法改正とは全く別の意味で、必要なのである(了)

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