コロナウィルスを退治するため、「消毒薬を体内に注入したらどうか」、と言ったトランプ大統領。
これには驚き、笑ったが、つぎのようなトランプ大統領の発言も驚きだ。
つまりトランプ大統領は、米国が世界一のコロナ蔓延国になったころから、にわかに中国たたきを始めた。
世界をコロナ禍に陥れたコロナウィルスの発生源は武漢のウィルス研究所だと。
武漢ウィルスなのだと。
それが証拠に中国は武漢のウィルス研究所を見せろと言ったが拒否したと。
この発言には驚いた。
中国の生物兵器開発が原因であり、それを世界に証明するために、世界の目の前で見せろと迫ったのだ。
しかし、米国は自他ともに認める世界一の軍事覇権国だ。
原爆をはじめあらゆる兵器の開発の先頭に立ち、使用して来た国だ。
もちろん生物兵器の開発も世界一だ。
その米国が、中国に対して生物兵器を研究している場所を見せろと世界の前で要求したのだ。
どこの国がそんな一方的で傲慢な要求に応じるだろうか。
ましてや中国はイラクとは違う。
いまやあらゆる分野で米国に追いつき、追い越そうとしている国だ。
よしんば武漢のウィルス研究所からコロナウィルスが流出したとしても、中国がそれを認めるはずがない。
そんなことはトランプの米国も百も承知のはずだ。
そう思っていたら、きょう発売のアサヒ芸能(5月7日-14日号)で、国際ジャーナリストの山田敏弘氏がこう解説していたのを見つけた。
アメリカは発生源を明らかにするよりも、中国がいかにダメな国かを世界中に知らしめればいいのですと。
すでにアメリカではフロリダ、テキサス、ネバダ、ミズーリ州で中国を相手取った訴訟が起きています。最終的にはアメリカ国内に中国が持っている資産や財産を凍結して、中国の活動の足止めをし、米中の覇権争いで有利に事を運ぼうとしているのですと。
なるほど、これなら合点が行く。
大統領再選のために中国をたたき、同時に中国が米国を超えることを許さない、という一石二鳥を狙った情報戦というわけだ。
しかし、私が驚いたのは、私も懇意にしている講談社出身の中国ウオッチャー近藤大介氏の次の言葉だ。
押され気味に見える習近平の中国だが、すでにしたたかに「コロナ外交」を進めて来たという。
マスク外交だけでなくワクチン開発も進み、何よりも治療薬開発だリードしているというのだ。
日本のアビガンに期待が集まる中、すでに中国の医学界でまことしやかにささやかれているのは、漢方医学機関が「肺炎1号」という特効薬を開発し、臨床実験で94・21%の有効性を示したという。
この漢方薬は量が限られているため、一般には公開せず、各国のVIPの命を助けて貸しをつくろうとしているのだという。
これが本当なら、米中対立は引き返せないほどのところまで来ているのではないか。
そしてその対立は、コロナ危機の後に本格的になるのではないか。
そしてコロナ危機で中国に勝てない米国はますます分が悪くなる。
残るは、情報戦で嘘を並べ立てるしかない。
嘘を本当のように言い立てるのはトランプ大統領の得意とするところだ。
日本はそんな米中の泥仕合から距離を置くべきだ。
中国を擁護する必要はないが、中国たたきに与してはいけない。
ところが、いまの日本を見ていると中国批判一色だ。
特に左翼の中国たたきが目につく。
なにしろ左翼の筆頭である日本共産党が党是として中国を批判している。
いまや朝日よりも左翼の東京新聞が中国たたきを止めようとしない。
4月26日の北京発坪井千隼、ワシントン発の岩田仲弘の連名記事で、中国政府が官民挙げて新型コロナウィルス開発に躍起になっている、と書いている。
米国に先んじて開発することで、コロナ後の国際政治をリードしようという狙いが透けて見える、と書いている。
その書き方が、明らかに中国に批判的だ。
米国に勝ってもらいたいといわんばかりだ。
これでは日本は米中対立から自立できない。
憲法9条外交からは程遠い日本になる。
アサヒ芸能のその記事はこう締めくくっている。
「・・・新型コロナに感染し、きょうも命を落とす人がいるというのに、大国同士が手をつないで協力する姿勢は見られそうもない・・・」
残念だと嘆いているのである。
アサヒ芸能のほうがよっぽどまともである(了)
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