中村医師が無言で帰国、帰郷した。
12月9日は新聞休刊日だったから、その模様を知るのはきょう10日の朝刊だ。
そこで知ったのは、この国の政治があまりにも彼の死に冷淡だということだ。
どうやら安倍首相には褒め殺しは通用しなかったようだ。
あれほど助言したというのに、聞いた事もないような副大臣に対応を任せただけだ。
あれほどアフガン政府が弔意を表し、真相究明に努めているのに、謝意ひとつ表明せず、真相究明に協力する素振りすら見せない。
中村医師は決して安倍批判者ではなかった。
パフォーマンス好きの安倍首相が、ここで中村医師の不幸な死を国民と共に悼んでも、批判を上回る評価が得られたはずだ。
それなのに、この冷淡さはなんだ。
しかし、もっと失望させられるのは野党の対応だ。
この事件が起きてから、一言も発していない。
安倍政権に中村医師銃撃死への対応の不十分さを問いただそうともしない。
せめて護憲政党ぐらい中村医師を出迎え、追悼すべきだったが、それもない。
この国の政治は、中村医師の銃撃死に対してあまりにも冷淡だ。
なぜだろう。
思うに、生前の中村医師は、この国の与野党にとって価値ある人物ではなかったのだ。
憲法9条を体現する中村医師が政府側にとって役立つはずがないのはわかる。
しかし、護憲政党もまた中村医師は利用価値のない人物だったのだ。
中村医師は文字通り憲法9条を、身をもって実践し続けた人物だ。
そんな中村医師の前では、口先で護憲を唱えるだけの政党の存在価値がかすむ。
しかも中村医師は現場で灌漑事業に忙しく、護憲政党の政治的宣伝につき合う暇はなかった。
要するに中村医師は、安倍政権にとっても、そして野党にとっても、政治的には利用価値のない人物だったのだ。
政治家たちは与党も野党も政局を最優先し、自分たちの生き残りしか考えない。
そのことは毎日の政局ニュースをみればよくわかる。
中村医師はそんな連中とは対極にあった人物だったのだ。
12月11日には中村医師の葬儀が行われると言う。
おそらくこの葬儀のニュースが、当面のニュースでは最後のニュースになるのだろう。
果たしてどのような政治家が参列するのだろうか(了)
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