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米軍に完全無視された河野防衛相とそれでも沈黙する日本

 戦後の日本を象徴する出来事が、国民の面前で白昼堂々繰り広げられた。

 在日米軍が日米合意に違反して嘉手納基地でパラシュート降下訓練を行った。

 これを知った河野防衛相が、「嘉手納で降下訓練が行われるのは明らかに日米合意に反し、受け入れられない」と記者団に述べた。

 降下訓練は、地元の負担軽減のために、嘉手納基地から伊江島へ移して実施することで、日米両政府が合意しているからだ。

 当然のことながら、政府は在日米軍司令官や米大使館に中止を申しれた。

 ここまではいい。

 ところが、嘉手納基地では真っ暗な夜空の中を米軍機からパラシュートを広げた複数の兵士が繰り返し降りてくるのが確認できたというのだ。

 例によって、米国からは何の通報も、返答もないから、日本の方で目視して確認するしかないのだ。

 目視で違反が確認できたのだ。

 それだけではない。

 伊江島でも訓練が実施され、おまけに訓練基地外に複数の兵士が誤って着地していたというのだ。

 おつりがくるほどの日米合意の完全無視である。
 
 移転先の伊江島で訓練し、同時にそれと引き換えに負担軽減のために訓練取り止めのはずだった嘉手納でも訓練しているのだ。

 日米合意では、嘉手納での訓練は、伊江島周辺で波の高いときに例外的に認められるとなっているらしい。

 だから、百歩譲って、その例外だったという言い訳もできたはずだ。

 しかし、同時に伊江島でも訓練していたのだから、日米合意の完全無視である。

 日米合意などお構いなしに、どこでも訓練しているのだ。

 いうまでもなく、河野防衛相は、ついこの間まで外務大臣をやっていた。

 日米安保条約にもっとも通暁している閣僚であり、これ以上ない日米安保条約の責任閣僚だ。

 ポスト安倍の有力候補者の一人だ。

 しかも官僚を下において、筋を通す硬派とみなされる閣僚だ。

 その河野大臣の「日米合意違反だ」という申し入れが、完全無視されたのだ。

 沖縄県の幹部は、「防衛相も中止を求めているというのに、強行するとは。日米安保体制って何なのか」と絶句したという。

 絶句しているどころではない。

 この国は、首相も閣僚も、与党も野党も、メディアも、有識者も、そして一般国民も、誰も本気で日米安保体制を変えようとはしない。

 日米地位協定の改定交渉さえ、口では皆がその必要性を指摘するが、誰も始めようとしない。

 戦後70年以上もたった日本の現実がここにある(了)

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