きょう2月2日の読売新聞(論点スペシャル)が、北方領土問題をめぐる安倍外交について、3名の国際専門家の意見を紹介している。
その中で私が注目したのが日本通の米国政治学者であるケント・カルダー氏が語っている内容だ。
米ジョンズ・ホプキンス大学ライシャワー東アジア研究所長という肩書のカルダー氏は、在日米国大使館につとめていた日本通の学者である。
学者だから目立たないが、日本のメディアを使って日米関係を誘導するいわゆるジャパンハンドラーの隠れた筆頭格だ。
そのカルダー氏が安倍首相の北方領土をめぐる外交について次のように警告している。
カルダー氏は日本通らしく、その冒頭で次のように安倍外交に理解を示す振りをして見せる。
すなわち、安倍首相がロシアとの平和交渉を前進させ、レーガシィ(政治遺産)にしようと、プーチン大統領と会談を重ねている事情はそれなりに理解できる、と。
しかし、その後に続く言葉は強烈だ。
すなわち、こう語っている。
日本の状況を知らない米国人は、なぜこんなに日本がロシアに接近しているのか、理解に苦しむところだろう、と。
米国は欧州と同様、2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア併合を強く非難し、厳しい制裁を課している、と。
それは、プーチン政権が欧州の国境を一方的に変更しようとした出来事として、日本人が思っている以上に深刻にとらえているからだ、と。
そして、その後に続くカルダー氏の言葉は極めて重要だ。
すなわち彼はこう語っている。
トランプ米大統領の支持層が集まる米中西部の「ラストベルト」(さびついた工業地帯)に住む人々はこの問題に敏感だ。一帯にはウクライナやポーランド、バルト3国など旧ソ連・東欧からの移民が多いからだ。彼らは冷戦時代から旧ソ連・ロシアを脅威に感じ、不信感を引きずってる、と。
そしてカルダー氏は次のように安倍首相に忠告している。
トランプ氏は個人的にロシアに敵意を持ってはいない、と。
それどころか彼自身はロシアとの関係改善を図ろうとしている、と。
しかし、米議会はロシアに厳しい目を向け続けて来たし、これからもそうだと。
特にロシア疑惑で弾劾の動きが厳しくなると、対ロ政策で厳しい態度を取ってきた共和党議員の支持はますます重要になってくる、と。
そう語った後で、カルダー氏はこう締めくくっている。
「もし日ロ間に大きな進展があれば、トランプ氏にとっても難しい状況になる。日米関係も、より複雑になる可能性がある」と。
これは安倍首相にとってこれ以上ない助言であるとともに警告でもある。
安倍首相より一枚も二枚も上手のプーチン大統領は、これからますます日米同盟の分断を画策して来るだろう。
おそらく北方領土を返してもらいたかったら、おなじく国境線の変更であるクリミア併合を認めよ、米国の経済制裁から手を引け、と言ってくるに違いない。
いや、もうすでにそう言っているのかも知れない。
戦略のない安倍首相にとってこれ以上ない踏み絵である。
それを示唆する読売新聞紙上のカルダー氏の言葉である。
はたして谷内正太郎は安倍首相にどう助言しているのだろうか(了)
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