いよいよ安倍首相が10月25日から訪中する事が正式発表された。
日本の首相が国際会議以外で中国を訪問するのは2011年12月の野田佳彦前首相以来、約7年ぶりである。
野田首相による尖閣諸島の国有化宣言して以来、悪化したままの日中関係を、やっと改善する絶好のチャンスである。
それなのに、なぜか安倍首相は大はしゃぎして喜んでいないごとくだ。
そんな安倍首相の心中を忖度してメディアも宣伝しない。
無理もない。
それにはこれだけの理由があるからだ。
一つは米中関係が冷戦状態になった最悪のタイミングで訪中することになったからだ。
いつもなら米中の仲介役を果たすと言いたいところだが、さすがにそうは出来ないほど米中の関係は悪化してしまった。
それどころか、習近平主席に対しては、「あらゆる分野で協力、交流を推し進め、日中関係を新たな高みに押し上げて行く大きなきっかけにしたい」(菅官房長官)といい顔をし、トランプ大統領に対しては、日米同盟関係を最優先して中国の行き過ぎをけん制して来る、と二枚舌を使わざるを得ないからだ。
要するにまた裂き状態で訪中しなければならなくなったのだ。
二つには今度の安倍首相の訪中が、日中双方にとって「打算の急接近」(10月13日日経)の中で行われるからだ。
すなわち、習近平主席には、将来的には米国からの技術協力が難しくなることを想定して日本との技術提携を進めたいという思惑がある。
安倍首相には、日中友好条約40周年を利用して、果たせなかった訪中を実現し、自分でも日中関係を改善させる事ができるということを国民に見せつけたいと事情がある。
打算の訪中では真の関係改善にはならない。
それを知っているから安倍首相も中国側も、宣伝出来ない、しないのだ。
三番目に、首脳会談をする以上、北朝鮮の非核化問題に触れざるを得ないが、おのずと立場の違いが明らかになるからだ。
最後に、安倍首相が宣伝できないもう一つの理由がある。
中国外務省の報道局長は安倍首相の訪中を発表した12日の定例記者会見で、今度の安倍首相の訪中は李克強首相が招待したものだと、わざわざ説明した。
つまり、安倍首相の今回の訪中は、李克強首相が5月に訪日した事に対する答礼訪問だと言ったのだ。
安倍首相の相手は李克強首相であり、習近平主席と安倍首相の会談は、あたかも習近平主席が訪日した時に天皇陛下に謁見するごとく、安倍首相による習近平主席に対する表敬会談であると言っているのだ。
こんな事が日本国民に知られたら大変だ。
これでは安倍首相が宣伝したくても出来ないはずである(了)
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