日米貿易摩擦が激しかった80年代、私は外務官僚として内部からそれを見て、米国の対日批判がいかに理不尽であったかを嫌というほど見て来た。
私は90年代末の3年間、米国自動車産業の本拠地であるデトロイトの総領事として、日本の自動車業界が米国の理不尽な要求をかわすためにいかに腐心、努力して来たかを目撃して来た。
だから、このトランプの発言だけは許せないと思った。
すなわちトランプは14日、ミズーリ州で開かれた集会で、米国自動車が日本で売れないのは貿易障壁があるからだと言って、次のように批判したという。
ボウリング玉試験を知っているか、と。
これは高さ6メートルからボウリング玉を落とし、もしボンネットが傷つけば品質の低い車だとして輸入規制する。
こうして我々は理不尽に愚かされている、これはひどいと。
きょう3月18日の東京新聞が、日本の自動車メーカー関係者の怒りを次のように書いている。
ひどいのはトランプだと。
まったくの誤解だと。
この実験は「歩行者頭部保護性能試験」といって、ボンネットに頭を強く打ちつけて死亡事故につながる事が多いから、頭のダメージを少なくするため、頭に見立てた球体をボンネットにぶつけ、衝撃を吸収できるかを検査するものだと。
トランプの批判とは逆で、ボンネットがちゃんとへこむように軟らかくしないといけないのだと。
この試験は世界の自動車業界では常識に違いない。
しかし、普通の者はトランプの言った事を真に受けるだろう。
ましてや、米国ファーストの米国民の事だ。
このトランプの日本たたきを本気にして怒るだろう。
日本政府は直ちに世界に向けて、このトランプの暴言に抗議しなければいけない。
安倍首相や河野外相や世耕経産相がトランプに忖度して何も言わないなら、経済界、自動車業界が抗議すべきだ。
メディアが騒がなければいけない。
さすがにサンダース大統領報道官は「冗談だ」と火消しに追われたらしいが、それでおしまいにしてはだめだ。
トランプは本気でそう思っているかもしれない。
一事が万事だ。
勘違いしたまま外交をやられては、対米従属の日本の事だから危なくて仕方がない。
日本は今すぐ世界に向けて抗議しなければ、トランプと共に心中する事になりかねない(了)
多くの米国人は、あいまいにすることを軽蔑する。
黙っていることは、それが正しくなってしまう。
同盟国と言えども、日本は主権国なのだ。こんな真実でない事にも
抗議ができないのでは、ますます他国は日本との交渉ごとに関してもトランプ大統領の
傀儡政権「ある国の意思のままに操縦される、形式的にだけ独立した国の政権」
として扱ってくるだろう。
安倍政権下で、外交も行き詰まった。