北朝鮮が南北融和の象徴である南北共同連絡事務所を爆破した。
この衝撃に、今すぐにでも北朝鮮と韓国の間に戦争が起こると勘違いしてはいけない。
この施設は、北朝鮮の内にあり北朝鮮がコントロールしている施設だ。
北朝鮮が周到に準備し、予告までして爆破したのだ。
爆破と爆撃は全く違う。
これは政治的メッセージなのだ。
言いかえれば、これは金与正氏の文在寅大統領に対するラブコールなのだ。
さすがにラブコールは言い過ぎだが、金与正氏の金在寅大統領に対する怒りなのだ。
愛憎は紙一重だから、怒りはラブコールの裏返しである。
そして、金与正氏の怒りは、そのまま金正恩委員長の怒りである。
メディアは金正恩書記長の健康悪化に伴って金与正氏への権力移譲が行われつつあるなどというデタラメが幅を利かせているがそうではない。
金与正氏は、いまもあの時も、金正恩書記長の意向を忠実に執行する部下であり、金正恩書記長が唯一、信頼して耳を傾ける分身なのだ。
金正恩委員長と妹の関係がますます密接になったに過ぎない。
それでは、なぜ金正恩委員長が文在寅大統領に怒ったのか。
直接原因は金正恩書記長を批判する脱北者のビラ配りを放置したからだ。
脱北者にそんな事を許す事を知って私は文在寅大統領の南北融和に対する本気度を疑った。
金正恩でなくとも、私はそんな緩い文在寅大統領に怒りを覚えたものだ。
しかも脱北者のビラ配り禁止は、さきの南北首脳会談の合意だったのだ。
文在寅大統領はあわてて取締りを厳しくしたが遅いのだ。
そして、ビラ配りの前にも金正恩委員長が怒った事があった。
それは米韓軍事演習の継続だ。
南北融和を本気で進めるつもりなら米韓軍事演習こそ不要なはずなのに、なぜ文在寅大統領はきっぱりと米韓軍事演習を中止できなかったのか。
これも当時私は腹立たしく思ったものだ。
すべては文在寅大統領の米韓軍事への未練だ。
反米大統領と非難される事へのためらいだ。
そんな中途半端な気持ちで南北融和という歴史的偉業を達成することなど出来はしない。
それにもかかわらず、今度の北朝鮮の爆破を見て文在寅大統領は次のような発表をした。
今度の事件の全面的責任は北朝鮮にあると。
さらなる挑発があれば強硬な対応を取らざるを得ないと。
最悪の対応だ。
こんな反応を示すようでは南北融和はますます遠のく。
もし文在寅大統領が本気で南北融和を進めるつもりなら、そして文在寅大統領がなすべき外交はそれしかないのだが、いますぐ北朝鮮に飛んで首脳会談を行うべきだ。
その首脳会談は、誰も同席させない、したがって会談内容が外部に一切漏れない、文字通り、金正恩・金与正と文在寅との間の首脳会談でなくてはいけない。
その極秘会談で、文在寅大統領は南北融和の本気度が足らなかった事を素直に謝罪し、雨降って地固まるのたとえのごとく(そんなたとえが朝鮮半島にあるのかどうかは知らないが)、これを機に南北融和に向かって一層の協力をしようと誓い合うのだ。
朝鮮半島の危機を回避するきっかけは文在寅大統領の本気度にかかっている。
この期に及んで日米韓同盟を優先するようでは南北融和は終わりだ(了)
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